前回は、M&Aの投資先として「フランチャイズ事業」をどう考えるかを考察しました。今回は、上場企業の「ノンコア事業」がM&Aで注目される理由を見ていきます。

国内上場会社は「1993年の約2倍」にまで増加

国内上場会社数は、一部と二部で2,566社、その他新興市場が1,018社あり、合計3,584社となっています。筆者が社会人となった1993年の上場企業数は約1,700社だったのに対して、約2倍にまで増加しています。


上場企業の子会社は何社ほど存在するのでしょうか。例えば、関連会社が多いと言われるソニー株式会社の連結子会社は1,292社、筆者が在籍したオリックス株式会社はSPC等も含まれているでしょうが850社と報告されています(2017年3月期の有価証券報告書より)。


これだけのグループ企業を四半期毎に、決算数字を集計して報告していることに驚きです。上記の例は極端ですが、数十社の子会社を抱えるのは、あまり珍しいことではありません。そこには、当然ながら、社員数名程度の小規模サイズの会社も多く含まれています。


更に「会社」を分解すると、本部、事業部、部課単位にユニット分けされていきます。ここまで分類すると、企業がどれだけの事業を抱えているかの集計は極めて困難です。一つだけ確実に言えることは、全ての事業が順調なわけではないということです。

 

ビジネスの世界では、上位2割が8割の利益を稼いでいるとよく言われます。平時に、稼ぎ頭の2割が売却対象になるケースは少ないですが、残りの8割や、全体利益に貢献していない子会社、事業部が売却検討の俎上に載せられることがあっても不思議ではありません。

役職員による「事業譲渡」は増加傾向に

上場企業が子会社、事業を売却するケースは多種多様です。赤字部門の切り離しや、大きな経営方針の転換等は分かりやすい理由です。まれに、前任者への批判や、新経営陣としての色を出したい等の理由も見受けられます。組織変更時に、思いがけずノンコア事業となってしまうこともあります。

 

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その場合、不幸にもノンコアと位置づけられてしまった子会社、事業部で働く人々の気持ちはどうでしょうか。よほど鈍感でなければ、モチベーションが下がるのが普通です。一部の優秀な人を除いて、人間は期待されないと能力以上の成果は出せず、継続的な努力も難しいと思います。その場合、期待される他所の会社に売られたほうが、売り手、買い手、そこで働く人にとって良いかもしれません。


実際に、ノンコア事業の売却は進んでいるとはいえません。売る側からすれば、前向きな話ではないため、ついつい先送りしがちなテーマです。また、本来このような仕事はトップ自ら先陣を切って行うべき仕事でしょうが、M&Aであれば華々しく買い手にまわりたいというのが本音だと思います。切羽詰まらなければ、どうしても優先順位が落ちてしまうのです。上場企業社長や役員は「任期」がある立場の人が多く、優先順位のある中で意図的に次の経営陣にバトンタッチすることも考えられます。


世間のM&Aに対する間違った思い込みもあるかもしれません。M&Aの世界で「おめでとう」という言葉は買い手に向けられるケースが多いですが、売った側にもメリットが多く、同じように賛辞されるべきなのです。


英断した責任者と実務担当者を評価すべきです。会社全体にとって、働く人にとって良いケースでも評価されるどころか、よく事情を知らない部外者から非難を浴びることさえあります。M&Aは意思決定プロセスを全て開示するわけではないので、当事者以外から色々と噂レベルで言われることがあります。


このように、大きな組織においては先送りしたいテーマであり、特に子会社・事業体が小規模であれば放置されてしまうことがほとんどです。そのような組織の中で、ビジネスマン生活を送るのは不幸です。勤め人として旬な時期は、そう長くはありません。新たに外部にスポンサーを見つけることも可能ですが、経営陣によるM&Aである「MBO」、従業員による「EBO」という選択肢もあります。事業規模が小さければ、経営陣の退職金と借入金で購入できてしまうケースもあるかもしれません。そこがスモールM&Aの面白いところです。


IRや日経新聞などに出ることはありませんが、役職員による事業譲渡は着実に増えており、今後水面下でますます増えると予測します。あなたが投資家なら、取引所を通じて株式を買うのではなく、直接企業に出向いてノンコア事業を変えるチャンスがあるかもしれません。そのような視点で上場企業を見ると、色々な発見があるはずです。

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