前回は、融資判断の材料とされる「社長自身の言葉」について紹介しました。今回は、取引会社を訪れる銀行員は会社の何を見ているのかを探ります。

社長の人柄や健康状態、夫婦仲まで確認

銀行と取引が始まると、銀行の担当者が会社に来てくれます。社長の近況を聞いたり、雑談をしたりして帰っていきますが、これは単に挨拶に来ているだけではありません。かれらは訪問の機会を生かして、上手に現場調査をしています。言ってみれば「視察」です。

 

どんな点を彼らが見ているかというと、たとえば次のような点です。

 

●社長は健康そうか。社長の健康状態が会社の業績に影響するからです

 

●会社の中の雰囲気はどうか。明るく清潔で、働きやすい職場であるか

 

●従業員の顔ぶれはどうか。従業員の入れ替わりが激しくないか。みんなやりがいを持って働いているか

 

●社長の趣味は何なのか。贅沢な趣味にお金を浪費していないか。社長の個人的な趣味に会社のお金が流れていないか

 

●最近、高価な買い物はしているか。適切なお金の使われ方がされているか。脱税や資金隠しのようなことはないか

 

特に新規申し込みの場合には、こんなことも見られています。

 

●社長の人柄やビジネスに対する向き合い方。仕事に対して真面目であるか。経営者としてのセンスや覚悟が備わっているか

 

●社長の年齢や健康状態、継承者の有無。事業承継のタイミングや承継先の見通しが立っているか。後継者の育成はできているか

 

●社長の家族構成とその関係性。夫婦仲や家族仲は良さそうか。揉め事が起こりそうな気配はないか

 

●社長が事業内容をきちんと把握しているか。事業を計画性を持って実行しているか。将来的なビジョンがあるか。リスクヘッジはできているか

 

こんなふうに実にさまざまなことにアンテナを伸ばし、リサーチをしているのです。社長のおしゃべりの一端から、家族のことや生活ぶり、従業員や取引先との関係、仕事の調子など多くの情報をつかみ、今後の付き合い方の参考にしています。

心証が良くなければ「融資するに値しない」と判断する

たとえば、家庭の不和や離婚を銀行はとても嫌います。離婚したら融資を打ち切られた社長もいました。離婚の原因が社長の浮気だったようで、銀行は自分たちが融資したお金が愛人に流れていたのではないかと思ったようです。

 

この場合、実際に社長が愛人にお金を使っていたかどうかはあまり関係ありません。銀行の「心証」が良くない時点で、「融資するに値しない」と判断されてしまいます。

 

社長の人間性やビジネスに対する姿勢、社内の雰囲気、従業員との関係性などは一朝一夕にできあがるものではなく、付け焼き刃で取り繕うにも限界があります。ですから、日頃から「第三者に見られている」という意識を持って、会社を良くしていってほしいと思います。

 

相手は融資のプロなので、こちらも経営者として万全の準備が要求されます。友達ではないので、気安く何でもしゃべりすぎないように気をつけましょう。

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    本連載は、2016年11月10日刊行の書籍『銀行に好かれる会社、嫌われる会社』(幻冬舎メディアコンサルティング)の本文から一部を抜粋したものです。

    銀行に好かれる会社、嫌われる会社

    銀行に好かれる会社、嫌われる会社

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