前回は、会社の根幹を強くする「経理」の重要性を取り上げました。今回は、事業承継問題が「中小企業に与える影響」について見ていきます。

後継者のあてがある場合でも、5~10年の時間が必要

会社を永続させようと思うと、事業承継は避けて通れない課題ですが、日本の中小企業の約9割が事業承継問題を抱えています。

 

これは、帝国データバンクの2013年の調査から明らかになった数字です。そのレポートを見ると、事業承継を「最優先の経営課題と認識している」企業が23.3%、「経営課題のひとつとして認識している」企業が63%となっています。中でも、後継者育成や後継者不在の問題を抱える企業が多いようです。

 

日本政策金融公庫総合研究所が行った「中小企業の事業承継」(2010年)を見ると、約4割が事業承継の課題として「後継者の教育」を挙げています。

 

事業承継では、会社がこれまで培ってきたさまざまな「ヒト」「モノ」「カネ」を引き継いでいくことが大切ですが、それは「今日、後継者を決めて、明日、バトンタッチします」というわけには、到底いかないことです。一般に、経営を引き継ぐために後継者育成に必要な時間は、5~10年と言われています。

 

すでに後継者のあてがある場合でも5~10年です。社長が70歳での引退を考えているのなら、少なくとも65歳のときには後継者の育成を始めていなければならないことになります。

後継者不在の問題は、銀行も注意深く見守っている

後継者のあてがない(後継者不在)場合は、さらに前から準備をしなくてはならないでしょう。帝国データバンクの調査では、2014年度に休廃業および解散をした企業は2万4153件でした。そのうち4分の3に当たる約2万件が、後継者不在の状況にありました。

 

ちなみに、後継者のいない会社が存続する道として、M&Aも最近はトレンドになってきた感がありますが、これにも時間がかかります。第三者が「買いたい」と思うような魅力のある会社にブラッシュアップするために、さまざまな改善や準備をしなくてはなりません。また、売りに出したからといって買い手がつくとも限りません。実際にはM&Aを選択できる企業は、ほんの一握りに過ぎないのです。

 

後継者がいない、後継者が育っていないという問題は、そこで会社が終わってしまうかもしれない危険に直結します。だからこそ銀行も注意深く見守っているのです。経営者として、次期社長を誰にするのかは早めに考えておくべき課題といえます。

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