今回は、銀行融資における担保権である「抵当権設定」と「根抵当権設定」の違いについて見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

融資の返済が完了すれば消滅する「抵当権設定」

「担保に頼らない融資をせよ!」
「過去に設定した担保も外しなさい!」
と、金融庁は銀行に指導しています。
しかし、実際には、
土地や建物を担保に差し出し、
抵当権を設定されている、
というケースが、まだまだ多いのです。

 

担保設定の内容を見せていただくと、
単なる「抵当権設定」と、「根抵当権設定」が、あります。
抵当に「根」の一文字がつくかどうかの違いですが、
どのように違うのか、ご存知でしょうか?
これが、一字違いで大違い、なのです。

 

単なる「抵当権設定」の場合、
その抵当権は、特定の融資に付きます。
ある建物を建てるのに、5千万円の融資を受ければ、
その5千万円の融資に対する、担保としての抵当権です。
特定の融資に付きますから、その融資の返済が完了すれば、
「抵当権設定」は、自動的に消滅します。

今後の融資への担保で、自動解除できない「根抵当権」

一方、「根抵当権」はどうなのか?
これは、これから先の融資に対して、
限度額を決めて、担保としての抵当権を付けるものです。
5千万円の建物を建てるとして、
“今後の融資に備えて、根抵当の形で設定させていただいて、
 よろしいでしょうか?”
銀行員は、こう持ち掛けます。
“構いません。お願いします。”
と、よく理解していないと、経営者は安易に返答してしまいます。
それに、借りなきゃ調達できないので、なおのこと、
深く考えずに返答してしまうのです。
要は、ある融資をきっかけに、
銀行は、「根抵当権」を付けにくるのです。
これから先の融資に対しての担保設定ですから、
先に借りた5千万円の返済を終えても、
自動的に消滅することがありません。

 

その会社に、文字通り、「根」をはってしまいます。
で、他の融資で弁済できない事情が発生した場合にも、
根抵当物件を、おさえにかかるのです。
銀行員は当然、「根抵当」にしたいのです。
「根抵当」があることで、返済が進んでくると、
“枠がありますから、お貸ししますよ。”
あるいは、全額返済されていても、
“限度額の枠設定がありますから、決算書をいただけますか。”
などと言ってきます。
「根抵当」は、銀行員にとって、何かと都合がいいのです。
つけ入る余地を得ることのできる、必須アイテムなのです。

 

では、どうすれば「根抵当」は解除できるのか?
基本的には、借入残高がないタイミングで、
こちらから、根抵当の解除を申し出る、しかないのです。
ところが、設定後、数年も経つと、
忘れてしまい、ほったらかしになるのです。
銀行員にとっては、ますます好都合です。
「根抵当」による弊害は、他にもあります。
その弊害について、次回も書かせていただきます。

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    本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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