前回は、相続対策に有効な「公正証書遺言・民事信託」の概要を解説しました。今回は、相続対策に不可欠な、「不動産を利用する」という考え方を紹介します。

どんどん厳しくなる、相続税、固定資産税といった税制

相続税をはじめとして、固定資産税などの税制は資産家にとって、どんどん厳しいものとなります。相続税、贈与税などの資産税は所有しているだけで負担しなければならない税制ですから、不動産は所有し続けるのではなく、利用すべき時期に入ったともいえます。これからの不動産への対応では、「所有するより利用する」ということがとても重要なテーマになります。

 

これまで所有していた資産家でも、企業経営者であれば企業が社宅として借り上げればよいのです。お金のある経営者は、法人を使って定期借家、定期借地のマンションを購入してもよいのです。定期借地期間が50年の土地では税法上注意が必要ですが一定の条件の下では土地も償却が可能です。定期借家であれば、建物も償却できます。50年で償却がすべて済むので、所有し続けるより好都合なのです。

 

ある所で所有していた土地が高く売れた場合には、その収益を有効に利用して、生きている間に使って、生きている間に相続対策をしていく。そのように、所有から利用への切り替えを考えていくことが相続対策にもなります。

老人ホーム用に土地を賃貸・売却するケースも増加

高齢の資産家の場合は、不動産利用方法について、将来的な判断として有料老人ホームを選ぶ人もいるでしょう。できるだけ介護サービスの行き届いた老人ホームを選ぶことは、高齢の資産家にとってこれまでの土地・不動産の有効活用の集大成という面もあります。何も使わず、活用せず、土地も金融資産もそのまま相続するのは、本人にとっても、相続人にとっても決して幸せなことではありません。

 

介護付き優良老人ホームの平均的な月額費用は30万円弱です。安いところでは月額10万円弱のところもあれば、月額100万円近いところもあり、値段の差がサービスの差に直結していないケースもあります。

 

では、どのような有料老人ホームを選べばよいか、いくつかのポイントを挙げていきましょう。

 

①立地

 

居住する本人にとっても家族にとっても利便性の高い一等地は当然ながら価格が高くなり、その額の高さは月額費用よりもむしろ入居一時金に反映されます。予算次第の面はありますが、入居一時金が高くても結局、立地で選んだほうが本人・家族にとって幸せな面があるのです。

 

②中古物件のリフォームも

 

有料老人ホームが増えるにつれて土地所有者に建物を建ててもらい、それをホーム運営会社がサブリースする方式や、ビジネスホテルやマンションなどの中古の建物を完全にホーム用に改装するケースもあります。

 

その方式の場合は、入居一時金の額が極端に低く、ゼロか数十万円ということもあります。入居する場合は、そういった理由で入居一時金が低く設定されているという事情を知っておく必要もあるでしょう。その分、介護サービスがどのように充実しているかを判断する一助ともなるからです。

 

③人員体制

 

当然のことながら、介護職員が多いとその分コストがかかり、月額入居費用が高くなる傾向があります。

 

概算ですが、要介護者二人に介護職員一人だと月額入居費用は10万円台でも、それが要介護者一人に介護職員一人だと月額入居費用は50万円以上になるという状況です。このように、人員の充実度合いが月額入居費用に大きく影響していることも理解しておくべきです。

 

いくつかの判断尺度はありますが、それを踏まえつつ「どのようなサービスを受けたいか」という視点でチェックしてみることが大切です。

 

資産家としては、自分が入居する老人ホームを検討する一方、そういう老人ホームのオーナーになる手法もないわけではありません。老人ホーム用に土地を貸したり売却したりするケースは、超高齢社会のなか全国で需要が高まっています。

 

立地としては公共交通機関の利便性よりむしろ駐車場がしっかりとあるほうが好まれますので、たとえ「交通の便が悪くて、売るに売れない」と思っている土地でも有効に活用できる方法であり、実際に老人ホームの事業者はそのような土地を探している面もあるのです。

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