他院との差別化のため、高価な医療機器を導入
高額な医療機器の購入・維持にかかる費用も医療機関にとっては大きな負担です。
X線を使って身体の断面を撮影するCT検査機器の設置台数を経済協力開発機構(OECD)の加盟諸国と比較すると、日本は人口100万人当たり101.3台と断トツです。これは2番目に多いオーストラリア(53.7台)のほぼ倍、OECDの平均(24.6台)の4.1倍という多さです。同じように、MRI検査機器の設置台数も日本が群を抜いていて、国内での設置状況に地域格差も目立ちます。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
日本の病院は、全国一律で「診療報酬1点=10円」と設定されているため、ほかの医療機関と価格面で差別化を図ることはできません。
そこで設備面で差を付けようと、最新鋭の医療機器の導入にこぞって走りがちになります。一式で十数億円もする高額な検査機器を、同じ地域の医療機関が重複して導入するケースもあります。さらにCTやMRIによる検査の診療報酬が他の診療よりも高く設定されていれば、当然、病院側は機器の導入に対して前向きになります。また患者側もCT検査ができる病院とできない病院では、検査のできる病院を選びがちです。
経営圧迫を防ぐため、不要な検査を行っている病院も…
高額な医療機器を一旦購入すれば当然、投資を回収する必要がありますが、機器の導入当時から、度重なる診療報酬の改定によって投資と回収の見込みにズレが生じるケースも少なくありません。そのため、病院の経営圧迫を防ぐために不必要な検査を行っている病院もあるのです。
厚生労働省の調べではCTやMRIの人口当たりの台数が多い地域ほど、検査の実施件数も増える傾向が分かっています。