治療方針、組織文化・・・病院の連携・統合に伴う問題点

前回は、病院を評価する際の基準と、医療提供体制の再編制による弊害について説明しました。今回は、医療提供体制の再編に伴い誕生した「地域医療連携推進法人制度」の問題点を取り上げます。

病院の再編・統合が容易になる制度だが・・・

そうした中、2015年の医療法改正に伴い医療提供体制の再編を大きく左右しそうなもう一つの仕組みが誕生しました。「医療版ホールディング(HD)カンパニー」とも呼ぶべき「地域医療連携推進法人制度」です。

 

きっかけは政府の「社会保障制度改革国民会議」が2013年8月にまとめた報告書でした。同会議はこの中で、同じ地域の医療機関による競合を避け医療・介護サービスのネットワークをつくる必要性を指摘。「協調」をベースに容易に再編・統合できるよう制度を見直すべきだと主張しました。

 

その上で、「たとえばホールディングカンパニーの枠組みのような法人間の合併や権利の移転等をすみやかに行うことができる道を開くための制度改正を検討する必要がある」と医療版HDの創設を提言しました。

 

国は、この制度を地域医療構想達成の一つの選択肢として位置付け、それを活用することで、高度急性期から慢性期まで病床機能ごとの需給を均衡しやすくできるとしています。

 

こうして地域に限られた症例を特定の施設に集めることができれば、医療機関側は医療の質や治療成績の向上を見込め、若手の医師が山間部で研修を積むようになることで、地域住民にとっては医療過疎の解消を期待できるとしています。果たして本当でしょうか。

これまで築いてきたガバナンスの統一は難しい

病院は「株式会社」のような営利組織ではありません。連携、統合してガバナンスがうまくいくとは思えません。全く別の病院同士が「明日」からスムーズに連携、統合することは簡単ではないのです。

 

病院の再編・統合は、日常的に使用する書類の様式からマスクをはじめとする衛生材料の種類、電子カルテなどのシステムの仕様や診療科ごとの治療方針に至るまで、院内の業務に関わるあらゆる要素を一つひとつ洗い出し、どのように見直すかを話し合う、気が遠くなるほど地道な作業です。

 

二つの病院の治療方針を本気で統一するなら、どちらの方針をベースにするか、科学的根拠(エビデンス)をいちいち示しながら議論しなければ医師たちは納得しないでしょう。

 

これまで長年にわたって独自の組織文化を築いてきた病院のガバナンスを統一し、大勢のスタッフをまとめる難しさも並大抵ではありません。もしも、運営主体が異なる複数の法人が入り混じるのなら、なおさらです。

本連載は、2017年5月30日刊行の書籍『病院崩壊』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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連載崩壊への道を突き進む…日本の病院の実際

医療法人中央会尼崎中央病院 理事長・院長

医学博士。1930年生まれ。
1955年に大阪大学卒業後、フルブライト交換留学生として訪米。
インターン外科レジデントとして5年間米国留学。
帰国後、1965年より大阪労災病院にて外科医として勤めた後、1975年からは大阪厚生年金病院(現・JCHO大阪病院)にて外科部長として勤務。
1985年、叔父の経営していた医療法人中央会尼崎中央病院理事長・院長に就任。
その後も全日本病院協会常任理事・監事、日本医療機能評価機構評議員、兵庫県私立病院協会(現・兵庫県民間病院協会)理事・副会長などを歴任。
日本外科学会専門医、日本外科学会指導医、日本消化器病学会専門医、日本医師会認定産業医、麻酔標榜医。

著者紹介

病院崩壊

病院崩壊

吉田 静雄

幻冬舎メディアコンサルティング

病院が姿を消す!? 2025年を目前に高まる医療需要だが病院経営は逼迫し、医師の偏在は止まらない・・・ 今、病院に何が起こっているのか? わが国の医療のあり方については、かねてより議論がなされてきました。 しかし、…

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