高利回りの「ハイイールド債券・新興国債券」に潜むリスク

今回は、高利回りの「ハイイールド債券・新興国債券」に潜むリスクを見ていきます。※本連載では、毎年1000を超えるファンドを分析する投信評価会社に所属する「投信のプロ」が、投資信託の基礎知識を世界一わかりやすく解説します。

高利回りの理由を考えると・・・

いつの世も、甘い話には気を付けないといけません。「第3回 投資信託に「低リスク・高リターン」の商品は存在するのか?」でお話したように、投資信託などの金融商品において、常にリスクが小さくてリターンが大きいものはありません。リスクとリターンは、長期間でみれば、ほぼ必ず背中合わせの関係にあります。

 

これは、高い利回りが期待されるファンドにもあてはまります。みなさんがよく目にするものとしては、ハイイールド債券や新興国の債券があります。2016年末現在、日本や欧州の国債金利は0%に近い水準にあり、経済の良好な米国でも2%台です。

 

それに対してハイイールド債券や新興国債券は5%近い利回りが得られます。ものすごく魅力的に映りますよね。また、一部に人気があるハイブリッド証券を組み込んだ投資信託も高金利が魅力です。これは主に金融機関の劣後債などを組み入れたもので、返済の優先順位が通常の債券よりも後回しになることと引き換えに、高い利回りが支払われるものです。

 

こういった投資対象は、常にリスクが顕在化しているのではなく、リスクが突然に顔を出すから始末が悪いのです。食材にたとえると、「生牡蠣」は美味しい食べ物ですが、稀にひどい食あたりがあるように、抱えているリスクが油断しているときに現れるのです。生の食材は自分が意識して気を付けることができても、投資の場合には、リスクがいつどのように顕在化するのかについては、プロでも正確に予測することはできないので、個人がコントロールしようとしてもうまくいかないことが多いです。

重要なのは何よりも分散投資

こういった投資対象は、まず分散投資に務めることです。新興国であれば特定の国に過度に投資を集中させない、ハイイールド債券であれば特定業種・業界に偏らないことがこれにあたります。

 

あれだけもてはやされた中国やメキシコといった新興国も、今では昔といった感があります。最近では、新興国の中でも経済状況が相対的に落ち着き、高金利のインド国債が人気です。経済は急に変化することがないため、しばらく良好な環境が続くと思われますが、潜在的にはブラジルやロシアと同様のリスクを有しています。

 

インドの場合はエネルギー自給率が低いため、原油価格が上昇する環境になると経済にマイナスの影響が生じます。ハイイールド債券にも死角は潜んでいます。少し前では、原油価格が下落しシェールオイル関連業種のデフォルトが相次ぎ、市場全体も影響を受けました。

 

同様に、金融機関が発行する劣後債などのハイブリッド証券も、有名な金融機関が名を連ねているので安心感がありますが、金融機関への集中投資のリスクがあり、敬遠される出来事が生じると急に取引が細ってしまう流動性のリスクを抱えています。

 

最近では、海外の銀行による暗黙の前提とされていた劣後債の償還が見送られたことを受けて、一部の劣後債の価格が急落しました。一定期間が経過すると償還して新たに借換債を発行するのが慣例だったのですが、当初発行した債券の条件がよいことから銀行が予想外にも償還を見送ったのです。こういったことは、投資する個人では想定できない事象です。

 

下記の図はハイブリッド証券と投資適格債と呼ばれる債券の価格推移を示したものです。普段は比較的落ち着いた推移をしているのですが、リーマンショック時のように市場が急変した時は価格が大きく変動する商品性を有していることがおわかりいただけるでしょう。

 

【図表】ハイブリッド証券と一般的な債券の価格変動

潜んでいるリスクに対してしっかり備える

魅力的な金利が提示されている債券への投資において注意すべきは、潜在的なリスクが突然にやってくることだけではありません。あまり意識はされていないのですが、こういったタイプには意外と多くのお金を振り向けてしまうからです。

 

株式への投資であれば、価格変動が大きいことへの警戒心もあって投資にまわすお金をセーブするのに対し、債券に投資をする場合には、投資によって得られる金利と銀行の預金金利を比べてしまうので、高い利回りを意識して預金から預け替える行動を起こしやすくなります。

 

また、高金利とはいっても数%程度に過ぎないので、どれくらいの金利利息をもらえるのかを金額に引き直して計算すると、つい大きいお金を投資してしまうことにもなります。たとえば、5%の金利だと100万円を投資すると5万円の利息ですが、1,000万円だと50万円になります。実際に得られる金額を意識してしまうと、お金に余裕があればたくさん投資したくなりますよね。

 

こういった特徴のリスクを有している投資対象には、「第7回 投資のリスクをコントロールする方法」でもお話ししたように、潜んでいる大きめのリスクを想定してお金を振り向けることが大切です。

 

第7回では、投資する資産によって価格が変動する大きさが違うので、それを目安にお金を調整することをお話ししました。では、高い金利が見込まれる債券であればどのようにみておけばよいのでしょう?

 

より正確にみるのであれば、過去にリスクが顔を出したリーマンショック時まで遡って、どのような価格の変動があったのかを参考にすることです。個人がそこまでするのも大変ですので、大雑把な目安を示しておきましょう。それは、米国債券のような世界でも最も信頼されている金利の水準を基準として、その何倍の金利があるのかによって、リスクの大きさに身構えておくことも一つの方法です。

 

たとえば、2017年初における米国10年債の金利水準は2%台です。それに対して新興国の債券に幅広く投資する投資信託の金利は5%台なので2倍強の水準です。そうであれば、2倍強のリスクがあると想定して、投資金額を2分の1に抑えておくことです。インドなど特定の新興国に投資する場合には、さらにその倍程度の価格変動の可能性があるとみておけばよいでしょう。美味しいものこそ、潜んでいるリスクに備えておくことが大切です。

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三菱アセット・ブレインズ株式会社 シニアコンサルタント

慶応義塾大学卒、唐木研究会出身。三菱UFJ信託銀行において、投資の専門家として20代前半から数十年にわたり、ファンドマネージャー、トレーダーとして一貫して運用の最前線に身を置き、市場のなんたるかを体得。その経験をもって、現在は、投資信託の評価会社である三菱アセット・ブレインズ(MAB)において、投資信託の販売支援や投資教育などを通じ、個人が安心して健全な資産形成に励むことができるための啓蒙に取り組んでいる。
書籍『顧客をリスクから守る資産形成術』(きんざい)を始め、資産形成に関する記事を新聞、雑誌に多数掲載。

三菱アセット・ブレインズ株式会社(MAB)
http://www.mab.jp/

著者紹介

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