今回は、「売上計上基準の見直し」による節税のポイントを見ていきます。※本連載は、オーナー企業へのコンサルティングサービスに強みを持つ、税理士法人アーク&パートナーズの著書『会社の節税をするならこの1冊』(自由国民社)の中から一部を抜粋し、売上・仕入れ・製造に関する「節税ポイント」を紹介します。

合理的な計上基準を採用することで、節税を図る

■有利な売上計上基準を考える

 

物やサービスを売っている会社で売上げを計上する場合、税務上、計上すべきタイミング(基準)がいくつか認められています。合理的な計上基準を採用することにより節税を図ることができるため、検討してみる必要があります。

 

売上計上のタイミングは、物の引渡しを要するものは「引渡しのあった日」、サービス(役務)の提供を要するものは「役務の提供の完了した日」とされています。

 

引渡しの日や完了した日については契約の内容や取引の形態に応じて、いくつかの基準の中から選ぶことになります。

 

■引渡しのあった日とは

 

引渡しのあった日について法人税法では、出荷日、検収日、使用収益開始日、検針日を認めています。

 

①出荷基準

商品等を自社が出荷したときを引渡しがあったとする方法です。計上のタイミングとしては一番早い基準です。この基準では、取引先等に商品が到着していなくても売上があったことになります。

 

②検収基準

相手方が検収したときに引渡しがあったとする方法です。納品を受けた場合、相手方は発注した商品の種類、数量、不良品がないかなど確認します。確認が済んではじめて検収が完了したとみなします。

 

③使用収益開始基準

土地等を相手方が使用収益(物を直接に利活用して利益・利便を得ること)することができるようになった日に引渡しがあったとする方法です。

 

④検針日基準

検針等により販売数量を確認したときに引渡しがあったとする方法です。

業種や業態に応じた売上計上基準に見直すことが重要

■役務の提供の完了した日とは

 

物の引渡しを伴わない請負などは、作業が完了し先方に完了報告して契約を履行したことになります。ただし、あらかじめ人員や日数に単価を乗じて決められた期間ごとに支払いを受ける契約の場合や基本契約と個別契約が分かれている場合などは、すべてが完了しなくても部分的に金額確定しているため収益計上しなければなりません。

 

■出荷基準としていると実際の売上金額と異なることがある

 

例えば、出荷後に相手方から返品があった場合には相手方に売掛金を払ってもらえるわけではありません。

 

決算前に販売して決算後に返品を受けた場合、売上計上基準を「出荷基準」としていると、一度売上げを計上することになります。つまり、返品されてお金はもらえないのに売上げに入れなければならず、返品の分まで税金を支払わなければならないということなのです。

 

この場合、出荷基準を他の基準に見直せば、不確定な売上げを計上しないですみます。

 

実務上、相手方に到着したタイミングを掴むのが難しいことから、売上計上基準を出荷基準としている会社がとても多いようです。節税のためだけでなく、その期の本来の売上をきちんと把握するためにも、業種や業態に応じた売上計上基準に見直すことは重要なことです。

 

見直す場合に注意しなければならないのは、合理的な理由なしに利益の状況を見ながら変更することは認められないということです。そして、見直した売上計上基準は、今後も続けて適用しなければなりません。

 

<ポイント>

●売上計上基準は出荷基準だけではない。

●出荷基準、検収基準、使用収益基準、検針日基準の中から、合理的なものを選ぶことができる。

●採用した売上基準は、これからも続けて適用しなければならない。

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