賃貸借契約の「契約解除の可否」を検討する際のポイント②

前回に引き続き、賃貸借契約の「契約解除の可否」を検討する際のポイントを見ていきます。※本連載は、弁護士法人サン総合法律事務所代表・パートナーの清水俊順弁護士、パートナーの高村至弁護士による編書、『借地借家事件処理マニュアル』(新日本法規)より一部を抜粋し、賃貸借契約の解除・解約の進め方を、事例を交えて分かりやすく説明します。

催告なしで解除権を行使できる「無催告解除特約」

(3) 無催告解除ができるか検討する

 

●無催告解除特約がある場合

 

連載第3回で述べたように、無催告解除特約は、賃料滞納を理由に契約を解除する際に、催告をしなくても不合理とは認められない事情がある場合には、催告なしで解除権を行使することが許される旨を定めた約定として有効と考えられています(最判昭50・11・6金法782・27)。

 

無催告解除特約による解除を認めたものとしては、賃料の滞納が5か月にわたり、他に特段の事情が認められない場合に、無催告解除特約に基づき解除を認めた判例(最判昭43・11・21判時542・48)、4か月の賃料滞納は、特段の事情がない限り信頼関係の破壊をするに足りる程度の背信行為であるとして、無催告解除特約に基づき解除を認めた下級審判決(東京地判昭55・9・19判時997・128)、3か月の賃料滞納及び賃借人が負担すべき国際電話料金の支払を怠ったため名義人である賃貸人が支払命令を受け、更に差押えまで受けてこれを立替払した事案について、無催告解除特約に基づき解除を認めた下級審判決(東京地判昭55・9・19判時997・128)などがあります。

長期間にわたる賃料滞納等があれば、無催告解除が可能

●無催告解除特約がない場合

 

無催告解除特約がない場合には、民法の原則に従って、相当期間を定めた上で催告を行い、期間内に履行がなされない場合に解除の意思表示をすることになります(民541)。

 

しかし、賃貸借契約を継続し難い重大な背信的事情が賃借人にある場合には、賃貸人と賃借人の信頼関係は既に破壊されたといえますので、催告をすることなく解除の意思表示をすることができます。

 

賃料の支払は、賃貸借契約における賃借人の中核的義務といえますので、賃料の滞納期間が長期になればなるほど、賃貸借契約を継続し難い重大な背信的事情があるといえるでしょう。

 

ただし、滞納期間のみをもって重大な背信的事情があると判断するものではなく、滞納額、滞納期間、滞納に至った経緯など一切の事情を総合考慮して重大な背信的事情があるかを判断します。

 

9年10か月の長期間の賃料滞納がある等の事情を考慮して、無催告解除を認めた判例(最判昭49・4・26判時742・55)がある一方、11か月の賃料滞納があっても無催告解除を認めなかった判例(最判昭35・6・28民集14・8・1547)もあります。

 

賃料の不払は無断増改築や無断転貸と比べて解消が比較的容易といえますから、無催告解除特約がない場合で、滞納期間も著しいレベルにまでは達していないケースであれば、原則に従い催告を行った上で、解除の意思表示を行うべきでしょう。

 

●無催告解除特約の位置付け

 

これまで見てきたように、そもそも賃貸借契約は、信頼関係が破壊されているという事情がなければ、賃料滞納という債務不履行があったとしても解除することはできません。一方で、長期間にわたる賃料滞納や著しい用法遵守義務違反等、背信性が著しい場合には、特約がなかったとしても無催告解除を行うことができます。

 

無催告解除特約は、背信性が著しい場合でなかったとしても、催告をしなくても不合理とはいえない事情があると認められる場合に、催告なく解除できるという点に意義があると考えられます。

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連載借地借家事件処理〜「賃貸借契約」の解除・解約の進め方

弁護士法人サン総合法律事務所 弁護士

平成2年3月、岡山大学法学部を卒業。平成5年10月に司法試験に合格し、平成8年3月には司法修習を修了(48期)。平成8年4月大阪弁護士会へ登録し、清水・高村法律事務所に入所。平成14年4月には、パートナーに就任。そして平成15年1月、弁護士法人サン総合法律事務所を設立。平成23年1月には代表パートナーに就任した。

著者紹介

弁護士法人サン総合法律事務所 弁護士

平成8年3月に大阪大学法学部を卒業。平成13年10月に司法試験に合格し、平成15年9月には司法修習を修了した(56期)。平成15年10月大阪弁護士会へ登録し、久保井総合法律事務所に入所。そして平成20年3月、弁護士法人サン総合法律事務所に入所。平成23年1月にはパートナーに就任した。

著者紹介

借地借家事件処理マニュアル

借地借家事件処理マニュアル

清水 俊順,高村 至

新日本法規

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