本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

「分業」によって成り立つ社会

現在、私たちの社会はたくさんの職業に分かれ、各人が自分の仕事に励むことによって、効率的に生産を行なっています。私たちの周りには自分で作ったものはほとんどありません。衣服、食料、住宅、家電製品、自動車など、すべて分業によって作り出されたものばかりです。モノだけではありません。病院、警察、消防なども、すべて分業で供給されています。

 

一般に、生活するために必要なものは、財・サービスと呼ばれます。財とは、テレビや車のように形のあるものをいい、サービスとは医者の診察のように形のないものをいいます。ただし、経済学でいうサービスとは、「無料」という意味ではないことに注意してください。デパートの販売員、旅行会社に勤務する人、学校の先生、警察官などは、すべてサービス業に分類されます。

 

財・サービスをどのように生産するかを経済体制といいます。経済体制の代表的なものには資本主義経済社会主義経済があります。かつては社会主義経済がもてはやされた時期もありましたが、現在ではほとんどの国が資本主義経済体制をとっています。

 資本主義経済の3つの特徴とは?

現在の社会を知るために、過去300 年の歴史を振り返ることから始めたいと思います。なぜ、300年前なのか?理由は二つあります。一つは市民革命によって絶対王政が倒され、人々が自由に経済活動を行なえるようになったのが、いまから約300年前だからです。

 

もう一つの理由は、産業革命という画期的な技術革新が起きて資本主義が確立したのもいまから約300年前だからです。とくに産業革命の影響は大きく、これにより人類は長い停滞時代を脱し、社会の生産力を飛躍的に高めました。

 

[図表]各国の産業革命

各国の産業革命(『政治・経済資料集』第一学習社より)
『政治・経済資料集』第一学習社より
 

一般に、財・サービスを生産するためには、土地(天然資源を含む)、資本(=工場や機械設備)などが必要です。土地や資本を生産手段と呼びますが、資本主義経済の第一の特徴は、生産手段が私的に所有されることです。生産手段を持つ経営者は資本家と呼ばれ、彼らは労働者を雇い、財・サービスを生産します。また、資本主義の第二の特徴として、市場で自由競争が行なわれることが挙げられます。

 

さらに、第三の特徴として、生産活動が利潤の獲得を目的として行なわれることが挙げられます。人間には金銭欲があります。安くて良いものを作れば、どんどん儲かります。そのためには努力を惜しみません。新しい技術を発明したり、新しい市場を開拓したりします。イギリスの資本家は産業革命によって安価な綿製品を工場で大量に生産し、莫大な利益を上げることに成功しました。

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

経済学の理論や数字を聞いても、それが何を意味するのか、そもそも何のための理論なのかがよくわからないという経験はありませんか? 本書は理論や数字の意味をしっかり理解できるよう、実際の経済状況や経済政策と結びつけ…

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