「分業」によって成り立つ社会
現在、私たちの社会はたくさんの職業に分かれ、各人が自分の仕事に励むことによって、効率的に生産を行なっています。私たちの周りには自分で作ったものはほとんどありません。衣服、食料、住宅、家電製品、自動車など、すべて分業によって作り出されたものばかりです。モノだけではありません。病院、警察、消防なども、すべて分業で供給されています。
一般に、生活するために必要なものは、財・サービスと呼ばれます。財とは、テレビや車のように形のあるものをいい、サービスとは医者の診察のように形のないものをいいます。ただし、経済学でいうサービスとは、「無料」という意味ではないことに注意してください。デパートの販売員、旅行会社に勤務する人、学校の先生、警察官などは、すべてサービス業に分類されます。
財・サービスをどのように生産するかを経済体制といいます。経済体制の代表的なものには資本主義経済と社会主義経済があります。かつては社会主義経済がもてはやされた時期もありましたが、現在ではほとんどの国が資本主義経済体制をとっています。
資本主義経済の3つの特徴とは?
現在の社会を知るために、過去300 年の歴史を振り返ることから始めたいと思います。なぜ、300年前なのか?理由は二つあります。一つは市民革命によって絶対王政が倒され、人々が自由に経済活動を行なえるようになったのが、いまから約300年前だからです。
もう一つの理由は、産業革命という画期的な技術革新が起きて資本主義が確立したのもいまから約300年前だからです。とくに産業革命の影響は大きく、これにより人類は長い停滞時代を脱し、社会の生産力を飛躍的に高めました。
[図表]各国の産業革命
一般に、財・サービスを生産するためには、土地(天然資源を含む)、資本(=工場や機械設備)などが必要です。土地や資本を生産手段と呼びますが、資本主義経済の第一の特徴は、生産手段が私的に所有されることです。生産手段を持つ経営者は資本家と呼ばれ、彼らは労働者を雇い、財・サービスを生産します。また、資本主義の第二の特徴として、市場で自由競争が行なわれることが挙げられます。
さらに、第三の特徴として、生産活動が利潤の獲得を目的として行なわれることが挙げられます。人間には金銭欲があります。安くて良いものを作れば、どんどん儲かります。そのためには努力を惜しみません。新しい技術を発明したり、新しい市場を開拓したりします。イギリスの資本家は産業革命によって安価な綿製品を工場で大量に生産し、莫大な利益を上げることに成功しました。