低下する経済成長率・・・いま中国が抱える課題とは?

今回は、経済成長率に翳りが見えてきた中国の「解決すべき課題」を考察します。※本連載は、大阪府の有名高校の教諭を歴任し、現在は大阪府立天王寺高等学校の非常勤講師を務める南英世氏の著書、『意味がわかる経済学』(ベレ出版刊行)の中から一部を抜粋し、経済学の基礎知識をわかりやすく説明します。

「一人っ子政策」が少子高齢化、労働人口減少の要因に

一般に、経済成長は人間の成長と同じで、ある時期に急速に伸びますが、その時期を過ぎると成長率は次第に低下していきます。経済成長率の大きさは、労働生産性の上昇(=技術進歩)と人口増加率によって決まりますが、技術進歩は先進国にキャッチアップした時点でメリットが失われます。

 

また、一人っ子政策は、あとになってから急速な勢いで少子高齢化と労働力人口の減少をもたらします。所得格差の拡大、土地バブルの破裂、環境悪化など、中国はいまさまざまな課題を抱えています。これまで順調に発展してきた中国も、そろそろ曲がり角に来ているといってよいでしょう。

中国版「トリクルダウン」も実現せず…所得格差は拡大

(1)所得格差の拡大

 

鄧小平は「先富論」を展開し、まず強い者が経済的に潤い、それがやがて弱い者にも波及することを期待しました。中国版のトリクルダウン理論です。しかし、トリクルダウンはアメリカがそうであったように中国でも起きませんでした。全体のパイは大きくなりましたが、所得格差は拡大の一途をたどっています。

 

とくに内陸部の農民の所得は沿海部の都市住民の3分の1程度しかないといわれます。海外旅行を楽しみ「爆買い」する富裕層がいる一方で、多数の国民が貧困のまま据え置かれているのです。人間はみんなが貧しければ文句をいいませんが、目の前にお金持ちが贅沢をしていると不公平感を募らせます。中国政府は、そうした国民の不満が自分たちに向かってくることを恐れています。だから、不満のはけ口を反日運動に向けさせ、不満を発散させているのだという指摘もあります。

 

現在の中国のジニ係数(値が大きいほど不平等)は、警戒線といわれる0.4を大きく超えており(図表)、ブラジルやメキシコなどに次いで、世界で最も所得が不平等なグループに属しています。所得格差の解消が今後の大きな課題です。

 

[図表]中国のジニ係数の推移

(資料:中国国家統計局)
(資料:中国国家統計局)

本連載は、2017年5月25日刊行の書籍『意味がわかる経済学』から抜粋したものです。最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「教育」この記事を読んだ方はこんな記事も読んでいます

「エトセトラ」この記事を読んだ方はこんな記事も読んでいます

連載経済ニュースを本質から理解するための「経済学」入門

大阪府立天王寺高等学校 非常勤講師

1951年生まれ。金沢大学卒。金沢大学助手を経て、1983年より大阪府立高等学校社会科教諭。2006年より指導教諭として、新採教員および中堅教員の授業力向上のために助言および師範授業に取り組む。「授業とは感動を与えることである」という信念のもと、社会現象の本質を考える授業を実践。著書として、『意味がわかる経済学』『学びなおすと政治・経済はおもしろい』、高等学校用教科書『政治・経済』『現代社会』『社会と情報』など多数。ホームページ  http://homepage1.canvas.ne.jp/minamihideyo/ 

著者紹介

意味がわかる経済学

意味がわかる経済学

南 英世

ベレ出版

経済学の理論や数字を聞いても、それが何を意味するのか、そもそも何のための理論なのかがよくわからないという経験はありませんか? 本書は理論や数字の意味をしっかり理解できるよう、実際の経済状況や経済政策と結びつけて…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧