長寿大国として知られる日本。その平均寿命は延び続けていますが、それに伴い、認知症患者も増加し、社会問題になっています。高齢者も認知症患者も増えていく、近未来の日本とは……みていきましょう。
恐ろしい…7人に1人が認知症「もう、いやだ」負担増す現役世代の悲痛 (※写真はイメージです/PIXTA)

「祝・世界一の長寿国」の影で増え続ける、認知症患者

WHOが発表した2022年版の世界保健統計(World Health Statistics)によると、平均寿命が最も長い国は日本で84.3歳でした。

 

また男女別に見ると、日本人男性の平均寿命は81.5歳で、スイスに次ぐ第2位、日本人女性は86.9歳で世界1位でした。世界の平均寿命は73.3歳といいますから、日本人は10年以上も長生きできるというわけです。

 

【世界「平均寿命」トップ10】

1位「日本」84.3歳

2位「スイス」83.4歳

3位「韓国」83.3歳

4位「シンガポール」「スペイン」83.2歳

6位「キプロス」83.1歳

7位「オーストラリア」「イタリア」83.0歳

9位「イスラエル」「ノルウェー」82.6歳

 

出所:WHO『世界保健統計(World Health Statistics)』(2022年版)

 

ただ寿命が伸びれば伸びるほど、問題が顕在化してくるのが認知症。「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」であり、その中でも最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、次いで「血管性認知症」が多いとされています。

 

初めのころは加齢による物忘れに見えることが多いとされていますが、「仕事や家事など普段やってきたことでミスが増える」「お金の勘定ができなくなる」「慣れた道で迷う」「話が通じなくなる」「憂うつ・不安になる」「気力がなくなる」「現実には見えないものが見える」「妄想がある」などのサインは認知症の可能性があるとし、専門機関に相談するよう呼びかけています(以上、厚生労働省ホームページより)。

 

若年性の認知症もありますが、年を重ねるにつれて認知症リスクは高くなります。2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人で、高齢者の6人に1人程度が認知症有病者とされています。

 

九州大学二宮利治教授の研究(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』)によると、認知症にかかっている高齢者の割合は、「65~69歳」で2.2%、「70~74歳」で4.9%、「75~79歳」で10.9%、「80~84歳」で24.4%、さらに「85歳以上」になると55.5%と2人に1人という割合になります。

 

また同研究では各年齢の認知症有病率が一定の場合、2025年には高齢者の19.0%、2030年には20.8%、2040年には21.4%、2060年には25.3%、850万人が認知症だとしています。

 

さらに生活習慣病(糖尿病)の有病率が認知症の有病率に影響することがわかっていて、2060年までにその有病率は20%増加するとされています。そのことを加味した場合の認知症有病率は、2025年で20.6%、2040年には25.4%、2060年には34.3%、1,154万人にまで増えるとされています。

 

2060年時の人口は8,674万人とされているので、日本人の7人に1人が認知症……そんな未来が訪れようとしているのです。