厚生労働省の公表する『雇用動向調査結果(令和6年)』によると、50代男性で転職した人は約5%にとどまります。理由はともあれ、転職したことで前職より収入が減ってしまった場合、家計の見直しは必須です。本記事では、年収1,800万円・52歳男性の事例をもとに、収入減少に伴う家計改善のヒントをCFPの山﨑裕佳子氏が解説します。※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。
「行ってきます…」年収1800万円の52歳外資系エリート。パリッとした高級スーツに身を包み、妻に隠れて通う〈本当の行き先〉【CFPが解説】
わずか3ヵ月で貯金250万円減…「失業保険」だけでは保てない生活レベル
少しずつ焦りを感じ始めるなか、失業保険の受給が始まりました。しかし、今までと同じ生活レベルを保つには資産の取り崩しは必須です。
資産は4,000万円ありますが、半分は株などです。そのため、すぐに取り崩せるのは2,000万円ほどでした。
何も知らない妻のカオルさんには、これまで同様、月35万円の生活費を渡しています。そのほか、水道光熱費、通信費、保険料、住宅ローン、長男の予備校費用などの支払いは、別途タケシさんが担っています。その結果、貯金残高が3ヵ月で約250万円減少。
長女の大学卒業まであと2年、長男はこれから大学進学を控えているため、教育費だけでもまだ1,000万円程度は必要でしょう。早く再就職をしなければいけない状況ですが、なかなか思うようにいかずに悶々とした日々を送っています。
【CFPが解説】50歳からのライフプランの見直しは「家計の持続可能性」を念頭に
タケシさんのケースでは、再就職先を探すことと並行して、これまでの高収入を前提とした生活設計の見直しが急務です。
1.家計を立て直す
まずは現状把握からです。退職前は毎月100万円の手取り収入がありましたが、現在の収入源は期間限定の失業給付のみです。かなり贅沢な暮らしを続けてきたタケシさん一家は、現状のまま何もしなければ預貯金が急速に減少することは避けられません。
高収入の家庭に多く見られるのが、いわゆる「どんぶり勘定」。細かく管理しなくても問題が生じないことで収支を把握していないことも少なくありません。
預貯金、保険、住宅ローン残高、毎月の固定費、生活費を一覧にして家計の全体像を把握することから始めましょう。そうすることで、現状のままの生活を続けた場合の預貯金の減少スピードが見えてきます。
2.固定費を見直す
家計を立て直す際には、食費など日々の節約だけでなく、固定費の見直しが効果的です。保険、通信費に不要なものが含まれていないか、また、会員サービスやサブスクなど不要な支払いを続けていないか点検して、必要性の低い支出を整理しましょう。
ただし、保険はやみくもにカットするのではなく、家族の生活保障に支障がないかをシミュレーションしてから慎重に判断するようにしましょう。
また、33万円の住宅ローンは今となっては大きな負担ですが、焦った末の売却や、貯蓄からの繰り上げ返済にかんしては、慎重に判断したほうがいいでしょう。適用金利、残債、売却した場合の見込額、住み替え費用など包括的に比較して、現在の住まいを売却する場合と維持する場合の双方を慎重に試算してみましょう。金融機関に返済条件の変更を相談することも選択肢のひとつです。
3.教育費と老後資金を同時に考える
長女の大学卒業まであと2年、長男はこれから大学進学を控えています。教育費は必要な時期や金額があらかじめ決まっているため、老後資金と区別して確保しておくことが大切です。
進学先の希望、自宅通学なのか、ひとり暮らしなのかを子どもを交えて話し合い、進学費用の総額を家族で共有しましょう。場合によっては奨学金の利用可能性も話し合う必要があるでしょう。
一方、夫婦はともに50代に突入し、老後までの準備期間も限られています。再就職後の収入が以前の水準より下がることを想定して今後の収支を確認する必要があります。
できれば65歳以降の公的年金の見込額を確認して、老後の生活費も合わせてシミュレーションするなど長いスパンで確認できるといいです。
4.再就職は年収に囚われない
50代が転職する場合、年収や役職などキャリアに囚われすぎず、就職先の選択肢を広げることも重要です。年収を一段下げた求人、専門知識を生かした業務委託など複数の働き方を検討してみましょう。
再就職までの期間に区切りを設け、まずは前に進むことも大切です。一歩踏み出すことで漠然とした不安から解放され、好循環を生むこともあります。前向きな行動が良い意味で想定外の仕事運につながることもあるでしょう。
5.家族で情報を共有して生活を再設計する
家計や教育費、住まいの問題は、タケシさんが一人で抱え込むには大きすぎる問題でした。カオルさんと家計の状況を共有して協力を仰ぐことが、苦境を乗り切るには最も大切です。
妻が希望する場合は、パートなどで収入を得る方法もあります。ただし、長年専業主婦だったことを踏まえつつ、本人の意向や家庭内の役割を十分尊重したうえで検討してみましょう。
50代は教育費や住居費の負担が重い一方、老後資金の準備も本格化する時期です。これまでの生活水準にとらわれず、家族にとって何を優先すべきかを考えて行動することが、今後の安心につながります。
タケシさんにとって最も大切なのは、家族とともに収入に見合った暮らし向きを築き、長く持続できるライフプランへの転換です。