結婚相談所に入会する娘が、年収500万円の会社員と交際

「お母さん、ちょっといい?」

佐藤和子さん(62歳・仮名)は、久しぶりに帰省してきた一人娘の優菜さん(35歳・仮名)から、神妙な表情で話しかけられます。

今から2年前、優菜さんは結婚相談所へ入会しました。

入会金に月会費、お見合いに関する費用、プロフィール写真の撮影や洋服・美容代、デート代なども含めると、婚活には思っていた以上のお金がかかります。

紹介される男性もなかなか希望どおりとはいきません。真面目そうな男性でも、会話がほとんど続かず一緒にいて楽しいと思えなかったり、見た目も爽やかで話も面白いけれど、年齢が40代後半で収入も優菜さんの希望より低かったり――。

「悪い人じゃないんだけど、決め手に欠けるのよね……」

そんなことを繰り返しているうちに、結婚相談所へ入会してから2年が経過しました。それまでに使った婚活関連の費用は、100万円を超えていました。

そんなとき、ようやく優菜さんが「この人なら」と思える男性と出会ったのです。

お相手は40歳の会社員、健一さん(仮名)。公的機関に勤務しており収入も安定、年収は希望する500万円を超え、優菜さんが結婚相手に希望していたほかの条件も満たしていました。年齢は少し上ですが、若々しい雰囲気で清潔感もあります。

デート中も優菜さんのことを気遣ってくれ、会話も楽しく、一緒にいて嫌なところは特にありませんでした。そうして二人は交際を始めます。

娘から交際相手の話を聞いた和子さんは、ようやく結婚が近づいてきたのではないかと喜んでいました。ところが、優菜さんは思いがけない悩みを母親に打ち明けたのです。

「年収500万円で、そんなに使って大丈夫?」娘が感じた違和感

ある日、優菜さんは健一さんから食事に誘われました。

「今度このお店を予約しようと思うんだけど、いつがいいかな?」

調べてみると、その店は有名な高級レストランで、コース料理の金額は1人3万円でした。

交際から半年が経ち、これまでの会話でも結婚を意識した話が増えていたことから、優菜さんは健一さんがプロポーズの場所として高級レストランを予約しようとしていることを確信します。

本来ならうれしくて仕方がないはずですが、優菜さんの気持ちは複雑でした。実は、健一さんとの交際が進むにつれて、あることが気になり始めていたのです。

それは、健一さんのお金の使い方でした。デートのとき、健一さんは基本的に食事代を支払ってくれます。レストランも普段から少し高級なお店を選ぶことが多く、二人で旅行に出かけたときには、1泊3万円を超えるホテルを予約してくれました。

最初の頃は、優菜さんもそんな健一さんを頼もしく感じていました。

「年上だし、私のことを大切にリードしようとしてくれているんだな」と思っていたのです。

ところが、いざ結婚を意識するようになると、健一さんへの見方が変わってきました。健一さんの年収は500万円台と決して低い収入ではありません。しかし、毎回のように高級レストランで食事をし、旅行では高級ホテルに宿泊...。服装や持ち物にもお金をかけているようでした。

「こんなにお金を使って、ちゃんと貯金できているのかな……」
 

優菜さんは次第に不安になっていきました。

これまでの婚活では、結婚相手の年収を重要な条件として考えてきました。収入が安定していて、年収500万円以上。「40代の男性だったらそのくらいは稼いでいてほしい」と考えて条件に入れていましたが、実際にその条件を満たす男性と交際してみると、今度はそのお金の使い方が気になってしまいます。

その話を聞いて、和子さんはつい厳しいことを言ってしまいます。

「何言ってるのよ。仕事も安定してるんでしょ? 優しくてちゃんと気遣いもしてくれるんだから、いい人じゃない。そんなこと言ってたら、あんたは一生結婚できないよ?」

和子さんに悪気はありませんでしたが、娘が長い間婚活を続け、なかなか結婚できずに悩んでいたことも聞いています。ようやく条件のいい男性と出会えたのだから、母親としては今度こそ幸せになってほしい。そんな気持ちからあふれた言葉でした。

しかし、優菜さんは黙り込んでしまいます。優菜さんにとっても、時間もお金もかけてようやく出会えた男性です。しかも、相手の条件は申し分ありません。それでも、心のどこかで感じている違和感を、どうしても拭い去ることができませんでした。

数日後に控えた高級レストランでの食事、そこでプロポーズされたら自分は素直に「はい」と答えられるのだろうか……。優菜さんはそんなことを考えていました。