十分な老後資金があるにもかかわらず、「相続税がかかるかもしれない」という不安や、まとまった退職金を「有効活用できるかも」という期待を入り口に、定年後に必要のない投資で失敗するケースは少なくありません。本記事では、不自由ない老後生活を送るはずだった元公務員夫婦の事例をもとに、老後の不動産投資における注意点と対策をCFPの山原美起子氏が解説します。
「話が違うぞ…」〈年金月40万円・退職金4,200万円〉60代・元公務員夫婦、老後は贅沢三昧のはずが…節約生活へ転落したワケ【CFPが解説】
【CFPが解説】本末転倒の「不必要な相続税対策」…不動産投資は、正しい知識と冷静な判断が必要
そもそもマモルさん夫婦に相続税対策は必要だったのでしょうか。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、妻と子2人なら4,800万円です。さらに配偶者には「配偶者の税額軽減」があり、取得した財産が1億6,000万円か法定相続分相当額の、いずれか多い金額までなら相続税はかかりません。
アパート建設による評価減や借入金の債務控除は、あくまで「高額な相続税が発生する人」にとって意味を持つ対策です。自身の退職金と自宅、そして評価額の低い郊外の土地。課税される可能性の低い家庭が、節税目的で5,500万円もの大きな借金を背負うのは本末転倒でした。
もちろん適切な条件が整えば、安定収入につながる不動産投資ですが、ビジネスモデル上、建設会社の大きな収益源は「建物を建ててもらうこと」です。
不十分な情報や満室水準を前提とした営業資料の収支シミュレーションを鵜呑みにせず、賃貸経営が長期にわたって黒字で続くかどうか、オーナー自身が正しい知識を持って冷静に判断しなければなりません。
不動産投資契約前に確認すべきポイント
まずは、土地を路線価などで評価し、遺産が相続税の基礎控除を本当に超えるのかを確かめましょう。
需要の乏しい土地は、売却して現金化する道も検討します。「相続土地国庫帰属制度」も候補ですが、「建物がないこと」などの要件があり、審査手数料と負担金がかかります。
また、現在はサブリース会社に対し、契約前に「借り上げ賃料が減額される場合があること」などを書面で説明することが義務づけられています。減額の条件、オーナーが負担する修繕の範囲、解約の条件を必ず確認してください。
確認した条件をもとに「借り上げ賃料が〇割下がったら」「10年目に〇万円の修繕費がかかったら」「ローン金利が〇%上がったら」など、条件が悪くなった場合の収支を試算し、それでも許容範囲かどうか十分な検証を行いましょう。