厚生労働省の『共生社会に向けた認知症施策の動向』によると、2022年時点での認知症高齢者は約443万人、軽度認知障害(MCI)の高齢者は約559万人と推計されています。認知症の進行による判断能力の低下は、家族を巻き込んでご自身が長年かけて築いてきた財産を巡るトラブルの引き金になりやすいです。本記事では、善意で叔母を世話していた38歳女性が、「勝手にお金を使っている」と親族からあらぬ疑いをかけられた事例をもとに、認知症に伴う財産管理の注意点と対策をCFPの山原美起子氏が解説します。
叔父さん、ひどすぎますよ…〈年金18万円・総資産6,300万円〉認知症の叔母を世話する38歳姪が悔し涙。“遺産への思惑”が透ける叔父の「非情なひと言」【CFPが解説】
「万一のときはお願いね」総資産6,300万円・認知症の76歳叔母の世話を任された38歳姪
ユリさん(仮名・38歳)の叔母であるケイコさん(仮名・76歳)は、生涯独身で子どもがいません。現在は月18万円の年金で暮らしており、預貯金3,800万円と評価額約2,500万円の自宅マンションを合わせ、約6,300万円の総資産を所有しています。
ケイコさんは、妹の娘であるユリさんを幼少期から可愛がっていました。「万一のときはお願いね」と自宅の合鍵を預けるほど、ユリさんに厚い信頼を寄せていたのです。
そんなケイコさんは、半年ほど前から物忘れが目立つようになり、「軽度の認知症」と診断されました。
「叔母さんを一人きりにはしておけない」と心配したユリさんは、毎週のように訪ねては家事を手伝い、やがて現金を預かって日々の買い出しや光熱費の支払いなど、事実上の「お金の管理」も担うようになっていきました。
「ユリちゃんになら安心して任せられるわ。いつもありがとう」
しかし、この「口約束」による金銭管理が、思いがけない疑惑を生むことになります。
「勝手に金を使うな!」叔父からの突然の追及に絶句
事情を知ったユリさんの叔父にあたる、ケイコさんの弟・シゲオさん(仮名・73歳)が、問い詰めに来たのです。
「ユリが姉さんの現金を預かって管理してるらしいな。本当に姉さんのために使っているのか? レシートや領収書を見せてみろ」
ユリさんは「頼まれたことをしているだけで、レシートはおばさんに渡している」と説明しましたが、ケイコさんがすでに処分してしまったのか手元には何も残っておらず、ケイコさん自身の記憶も曖昧で、正当性を証明する術はありません。
「どういう魂胆か知らないが、あとは俺が対応するから。二度とうちの金を勝手に使うな!」
子のいないケイコさんにとって、弟のシゲオさんは法定相続人です。真意はわかりませんが、将来受け取れるかもしれない遺産が減ることを心配しての言動にも見えました。
「叔父さん、ひどすぎますよ……心配で手伝っていただけなのに。なんで疑われないといけないの……」
ユリさんは、シゲオさんからの非情なひと言に悔しさとやりきれなさがこみ上げ、涙が止まりませんでした。