個人事業主やフリーランスとして働く場合、日々の仕事に加え、税金や社会保険料の支払いも自分で管理する必要があります。生活費を優先し、国民年金保険料や届いた通知を後回しにしていると、思わぬ形で暮らしに影響が及ぶこともあります。本記事では辻本剛士CFPが、年金の通知を放置し続けた結果、思いがけない事態に直面した事例をもとに、国民年金の未納を放置するリスクについて解説します。
「嘘だろ、残高ゼロ…?」月収30万円・38歳男性、日本年金機構からの〈青い封筒〉を無視し続けた結果【CFPが解説】
銀行窓口で告げられた「差し押さえ」…放置していた〈青い封筒〉の正体
「身に覚えのない出金があるのですが、どういうことですか?」
ショウさんは、そのまま銀行の窓口に向かいました。しかし、口座の状況を確認した行員から返ってきたのは、思いもよらない説明でした。
「こちらは、預金の差し押さえに伴う出金です」
「差し押さえ……? どうして俺の口座が?」
動揺しながら自宅に戻ったショウさんは、棚に積み上げられていた郵便物を探しました。日本年金機構から届いた青い封筒を開くと、未納の国民年金保険料の支払いを求める「特別催告状」が入っていました。ほかにも、放置していた最終催告状や督促状も見つかります。
「保険料を払っていなかったからか……」
記載された内容を年金事務所に確認すると、「今回の出金は未納保険料を徴収したものだ」と説明されました。対象となった期間や金額を聞き、ようやく口座からお金がなくなった理由を理解します。
もともと、ショウさんは年金や健康保険の制度に詳しくありませんでした。会社員を辞め、自分で保険料を納める立場になっても「まずは手元の生活費が優先」と支払いを後回しにしていたのです。
「今の仕事に定年なんかない。年金をもらわなくても、65歳を過ぎて働けばいい」
何度も届く通知で「差し押さえ」の文字が目に入ることはありました。それでも、「やれるものならやってみろ。どうせ国が個人の年金くらいで、そこまでしないだろう」と考えていたのです。
【CFPが解説】最終催告状の無視で財産差し押さえも…国民年金「未納」のリスク
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が原則として加入する年金制度です。20~60歳までの40年間、保険料をすべて納めるなどの条件を満たした場合、令和8年度の老齢基礎年金の満額は年額84万7,300円です。
会社員などは給与から厚生年金保険料が天引きされます。一方、個人事業主やフリーランスなどの国民年金第1号被保険者は、自分で国民年金保険料を納めなければなりません。
こうした納付義務があるにもかかわらず、支払う能力のある人が未納を続け、繰り返しの納付案内にも応じない場合は、最終催告状が送られます。その指定期限までに納付しなければ督促状が届き、さらに指定期限を過ぎても納めない場合は、預貯金などの財産が差し押さえられることがあります。
厚生労働省および日本年金機構の公表資料によると、財産差押件数は令和4年度の12,784件から、令和5年度には30,789件へ増加しました。
令和4年度:12,784件
令和5年度:30,789件
令和6年度:26,797件
令和7年度:26,859件
未納保険料をまとめて徴収されると、家賃や生活費の支払いに支障が出ることもあります。また、督促状の指定期限までに納めなければ、延滞金も発生します。
日々の生活への影響を避けるためにも、保険料は納付期限を守って支払うことが大切です。経済的な事情で納付が難しい場合は、届いた通知を放置せず、年金事務所で免除や納付猶予の制度を利用できるか確認しましょう。