「お金の管理は自分でできる」と強がっていた祖母だが…消えた2億8,000万円の行方

後に専門家の協力を得て調査した結果、ある事実が浮かび上がりました。

ヨシコさんは数年前から認知症の症状が進行しており、判断能力が著しく低下していたのです。その隙に、親しげに近づいてきた知人や悪質な業者に丸め込まれ、不当に安い価格で不動産を手放したり、無価値な金融商品を買わされたりしていました。

当時のヨシコさんは資産管理を完全に一人で行っており、離れて暮らすケンタさんたち家族には一切相談していませんでした。「お金の管理は大丈夫?」と尋ねても、「自分でちゃんとできるから心配ない」と強がるばかりでした。

「葬儀から数ヵ月経ちますが、遺されたのは老朽化した実家と、価値のないガラクタばかり。資産価値は相続税の基礎控除すら下回る見込みです……」

2億円以上の資産があるから安心と信じ込んで、祖母の異変に気づけなかった自分が情けなくてたまらない。多額の資産があっても、判断能力が低下したときにそれを守る仕組みがなければ、お金は守れないという現実を前に、ケンタさんは震え上がりながら後悔の念に駆られています。

果たして、今回のように親や祖父母の認知機能が低下する前に、大切な財産を悪意のある第三者から守るためには、家族としてどのような相続の準備をしておくべきなのでしょうか。

【弁護士が解説】親が元気なうちに家族で話し合うべき「財産を守る仕組み」

多額の資産があるからといって、その財産が将来まで安全に残るとは限りません。本件で重要なのは、相続対策だけでなく、本人の判断能力が低下したときに「誰が、どのように財産を守るのか」を元気なうちに考えておくことです。

注意したいのは、認知症になったというだけで、本人が行った売買契約や投資契約が当然に無効になるわけではないという点です。契約当時、その取引の意味や結果を理解する能力がなかったといえる場合には効力を争える可能性がありますが、本人の死後、数年前の判断能力を立証することは容易ではありません。

そのため、判断能力が十分なうちに、家族と財産の所在を共有するほか、信頼できる人に財産管理を委ねる契約、将来に備えた任意後見契約、財産の種類によっては民事信託(いわゆる家族信託)などを検討する方法があります。

すでに判断能力が低下している場合には、成年後見制度の利用が選択肢となります。

高齢者の財産を守るうえでは、「亡くなったあとにどう分けるか」だけでなく、「亡くなるまで財産をどう管理し、第三者による不当な取引を防ぐか」という視点も重要です。

山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士

※個人の特定を避けるため、事例の一部を脚色しています。

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