孤独死というと一人暮らしの高齢者特有の問題と捉えられがちですが、家族と同居していながら社会や家族から孤立し、発見が遅れる「同居孤独死」の不安を抱える人は少なくありません。本記事ではFPオフィスツクル代表・内田英子氏がAさんの事例とともに、同居や備えがあっても生じる老後の孤立感と、心の居場所を取り戻すための視点を解説します。※本記事では、個人の特定を避けるため、相談内容を一部脚色しています。
「孫と暮らせて幸せです。でも本音は…」息子家族と同居しているのに、なぜか〈孤独死〉を恐れる“年金21万円・貯金2,000万円の70歳女性”の苦悶【FPが解説】
老後資金は「減らさない」から「どう活かすか」へ
これからどう暮らせばよいのかわからなくなったAさんは、ファイナンシャルアドバイザーに相談することにしました。
年金は遺族厚生年金の受け取りを含めて月21万円。夫が残してくれた財産もあり、手元には約2,000万円あります。Aさんのいまの暮らし方や希望を整理し、Aさんの現在の生活費や今後想定される住居費・介護費などについて一定の前提を置いて試算すると、今回の前提の範囲では、老後資金が不足する可能性は低いと考えられました。
お金が足りるかどうかを確認できたことで、Aさんのお金の話は「どう守るか」から「どう使うか」へと変わっていきました。自分自身の楽しみや経験に使うことはもちろん、家族に残す以外の選択肢として、寄附という使い方も紹介しました。
老後のお金というと、何歳まで生きても足りるか、介護にいくら必要か、といったことに意識が向きがちです。もちろん、それらを確認することは大切です。しかし、人生の先が少しずつ見えてきた時期だからこそ、「いまあるお金を使って、これからどんな時間を過ごしたいか。自分が亡くなったあと、社会にどのようなつながりや思いを残したいか」といった視点から、これからの暮らしを考えてみる方法もあります。
新しい生きがいと人とのつながり
Aさんは少しずつ、自分がこれからやりたいことを考えるようになりました。地域のボランティア活動にも参加するようになり、少しずつ人とのつながりも広がっています。
そんななか、お金に対する考え方にも変化があったそうです。以前は「自分が亡くなったあとのお金は、息子夫婦が好きに使えばいい」と思っていたAさん。しかしいまは、社会貢献活動にも自分のお金の一部を役立ててもらえたら、と考えるようになったといいます。
老後の生活設計は、「足りるかどうか」を確認したら終わりではありません。安定した生活環境があり、人生の先が少しずつ見えてきたからこそ、「これから自分はなにをしたいのか」「そのために今あるお金をどう使いたいのか」、そして残ったお金にどんな思いを託したいのか。そんな視点から、これからの暮らしをもう一度思い描いてみてもよいのではないでしょうか。
内閣府孤独・孤立対策推進「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)」
https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/zenkokuchousa/r7/pdf/tyosakekka_gaiyo.pdf
内田 英子
FPオフィスツクル代表