【CFPが解説】地方移住で後悔しないために…旅行では見えない「気候とインフラ」の壁

近年は、退職後の生活を自然豊かな地域でゆったりと過ごす「地方移住」が注目されています。しかし一方で、実際に暮らし始めてから「思っていた生活と違った」と感じ、元の地域へ戻る人もいます。

内閣府が実施した『農山漁村に関する世論調査』では、農山漁村地域に住む人に、都市住民が農山漁村地域へ移住する際の問題点を尋ねています。その結果、「都市地域への移動や地域内での移動などの交通手段が不便」が49.3%、「買い物、娯楽などの生活施設が少ない」が41.6%、「医療施設、介護施設や福祉施設が少ない」が30.1%となりました。 

移住する際の問題点

都市住民が移住するための仕事がない:56.6%

都市地域への移動や地域内での移動などの交通手段が不便:49.3%

買い物、娯楽などの生活施設が少ない:41.6%

医療施設、介護施設や福祉施設が少ない:30.1%

都市住民を受け入れるサポート体制が整備されていない:27.8%

子育て支援施設や教育施設が少ない:25.5%

道路、水道や電気、インターネット環境などのインフラ整備が不十分:20.9%

出典:内閣府 世論調査 調査票-農山漁村に関する世論調査(令和3年6月調査)

旅行や短期間の滞在だけでは、季節による気候の変化や交通の不便さ、買い物や通院のしやすさまでは把握しにくいものです。また、高齢になれば車の運転が難しくなったり、夫婦のどちらかに介護が必要になったりすることもあるでしょう。

こうした状況でも生活を続けられる環境か、事前に確認しておく必要があります。

また、移住先で住宅を購入する場合は、物件価格だけでなく、リフォーム費用や引っ越し費用、家具・家電の購入費など、数千万円の初期投資が必要になることもあります。移住がうまくいかず住宅を売却しても、購入費用やリフォーム費用を回収できるとは限りません。

移住を検討する際は、気候の厳しい季節にも現地を訪れ、交通事情や生活インフラ、医療・介護サービスなどを確認することが大切です。

移住からわずか2年…1,200万円の損失を抱え、逃げるように都内へUターン

妻の骨折をきっかけに将来の生活を見直したヒデミツさん夫婦は、軽井沢への移住からわずか2年で別荘を手放すことを決めました。

しかし、2,000万円近い価格で売り出しても、なかなか買い手は現れません。築年数が古いうえ、駅から離れており、車がなければ生活しにくいことなどが売却の妨げとなりました。

妻の通院や今後の生活を考えると、買い手が現れるまで何年も待つわけにはいきません。値下げを重ねた結果、最終的な売却価格は1,600万円。購入価格の1,800万円を下回り、1,000万円をかけたリフォーム費用もほとんど回収できませんでした。

夫婦は別荘を手放し、逃げるように都内の賃貸マンションへ戻ります。以前の自宅はすでに売却しているため、今後は毎月の家賃も支払わなければなりません。

自然に囲まれた暮らしへの憧れだけでなく、冬の気候や交通手段、医療・介護環境、住宅の維持費まで確認していれば、違った選択ができたかもしれません。

地方移住を検討するときは、現在の健康状態や資産だけで判断せず、年齢を重ねたあとも暮らし続けられるかを考えることが大切です。まずは賃貸住宅やお試し移住を活用し、季節を変えて現地で生活してみるなど、段階を踏んで判断しましょう。

辻本 剛士
神戸・辻本FP合同会社
代表/CFP

※個人情報保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。

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