退職後は、自然豊かな土地でゆったり暮らしたいと考える人もいるでしょう。しかし地方移住には、厳しい気候や交通の不便さ、医療・介護インフラなど、旅行では見えにくい課題が潜んでいます。本記事では軽井沢の別荘を購入したものの、憧れていた暮らしと現実のギャップに直面し、わずか2年で別荘を手放すことになった68歳男性の事例をもとに、老後の地方移住で後悔しないための注意点を辻本剛士CFPが解説します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
地方移住、後悔しています…「退職金2,000万円」で軽井沢の別荘を買った68歳男性。夢のスローライフを打ち砕いた〈残酷な現実〉【CFPが解説】
快適だった軽井沢生活も…冬の厳しい寒さと「光熱費月7万円」の現実
地方移住した当初、ヒデミツさん夫婦は軽井沢での暮らしを満喫していました。夏でも比較的涼しく、自然に囲まれて時間を気にせず過ごせる毎日に「移住して正解」と感じていました。
ところが、9月下旬になると朝晩の冷え込みが目立ち始め、10月には早くも暖房が欠かせなくなります。11月に入ると最低気温が氷点下になる日もあり、想像以上の寒さに戸惑いました。
冬場は暖房を一日中稼働させ、光熱費が月7万円を超えることもありました。さらに、買い物や通院には車が欠かせず、夫婦で所有する2台分の税金や保険料、車検代もかかります。
生活費は移住前より月平均で約10万円増え、年金だけでは足りない分を貯金から補うようになりました。
妻の骨折と「老老介護」の不安…夢の地方移住が後悔に変わるまで
そんな冬のある朝、妻が凍結した玄関先で転倒し、大腿骨を骨折します。退院後も歩行や入浴などの介助が必要でしたが、訪問介護事業所は人手が足りず、希望する曜日や時間帯には利用できませんでした。
近くに頼れる親族や友人もいないため、ヒデミツさんが介助や家事、買い物、通院の送迎を一人で担います。妻のけがは少しずつ回復していきましたが、夫婦の心には大きな不安が残ります。
「もし次は、俺が倒れたらどうなる……?」とヒデミツさんは考え始めます。
冬の寒さや車が欠かせない生活、老後への不安から、夫婦の会話は次第に減っていきます。長年の夢をかなえたはずのヒデミツさんでしたが、いつしか「こんなはずじゃなかった」と、軽井沢への移住を後悔するようになりました。