独立したての個人事業主など、国民年金の保険料納付に負担を感じる人のなかには「時効の2年以内にまとめて払えば問題ない」と考えることもあるでしょう。しかし、その認識のまま万が一の病気やケガに直面すると「障害基礎年金」が受給できなくなる恐れがあります。本記事では、年金を滞納している28歳個人事業主の事例をもとに、滞納者が陥りやすい年金制度の落とし穴について、特定社会保険労務士・CFPの五十嵐義典氏が解説します。
「今すぐ払わなくていいんだろ?」月1.8万円の年金滞納を甘く見た28歳個人事業主の誤算。老後の年金減額より怖い〈まさかのルール〉【社労士FPが解説】
【社労士FPが解説】老後だけではない…万が一に備える「障害基礎年金」の仕組みと保険料納付要件
ケンタさんにとって、年金制度は「将来、高齢になったときにもらえる老齢年金」だけに関わるものではありません。
現役世代であっても、病気やケガで重い障害が残り、働くことが困難になった場合に支給される「障害年金」という重要な保障制度があります。個人事業主を続けるなか、これからもし一定の障害(障害等級1級・2級)が残った場合、障害基礎年金の対象になり得ます。
障害基礎年金の額は、障害等級2級の場合は84万7,300円(2026年度の70歳以下の場合の年額)、1級の場合は2級の1.25倍の105万9,125円(2026年度の70歳以下の場合の年額)となります。
しかし、これら障害基礎年金の受給は、保険料納付要件を満たさなければ、障害等級(1級・2級)に該当していたとしても、受給できないことになります。
保険料納付要件については、原則要件か特例要件いずれかを満たしている必要があります。いずれも要件を満たしているかは、初診日、つまり初めて障害の原因となる病気やケガの診療を医師等から受けた日を基準に判定されます。
原則要件は、初診日の前日において、初診日の前々月までの国民年金被保険者期間に保険料納付済期間と保険料免除期間が3分の2以上あることとなります。
一方、特例要件は、初診日の前日において、初診日の前々月までの直近1年間の国民年金被保険者期間に未納期間がないこととなります(※)。
※特例要件は初診日時点で65歳未満であることが条件で、2036年3月31日までの時限措置となります。
2年以内に払ったのに…注意すべき障害年金の納付要件
原則要件と特例要件いずれも、「初診日の前日」時点で「初診日の前々月」までの納付状況を確認します。
初診日の前日時点ということは、初診日当日以降に納付しても、納付要件の判定上は保険料納付済期間に算入されないことになります。そして、初診日の前々月までということは、本来の翌月末日という保険料の納付期限を過ぎた期間でもって納付要件の判定を行うことになります。
たとえば、初診日が2026年12月10日の場合、2026年10月(初診日の前々月)までの期間で納付要件の判定をしますが、2026年10月の保険料を納付期限(2026年11月30日)までに払わず、2026年12月10日(初診日当日)以降に払っても、その2026年10月分は保険料納付済期間にならず、未納期間と扱われます。
たとえ2年以内の納付であったとしても、初診日の前日までに払っていなければ、納付要件上は「未納期間」と見なされ、その結果、納付要件を満たせないことによって障害基礎年金が受給できなくなる恐れがあります。