夫の長年の単身赴任による別居で、経済的に不安のない気ままな生活に忍び寄る、熟年離婚の影――。別居で心の離れた夫に離婚を切り出されたら、それまでの不自由ない生活は崩れ去ることに。今回は、単身赴任の夫からの仕送りで優雅に暮らしてきた専業主婦が離婚を切り出された事例から、熟年離婚に直面した場合の対応についてCFPの松田聡子氏が解説します。
「30年も専業主婦だったのに、どうやって生きていけば…」年収1,500万円・単身赴任中の夫から離婚を告げられた56歳女性〈離婚後のシビアな経済事情〉
56歳ならまだ準備できる…離婚後を「3つの期間」で考える
章代さんの離婚後の生活について、考えるべきポイントをFPからアドバイスします。
1. 夫の希望だけでは離婚は成立しない。まずは準備期間をつくる
協議離婚は、夫婦双方の合意がなければ成立しません。章代さんが離婚に同意せず、調停でも合意できない場合、和彦さんが離婚を求めるには裁判で離婚原因が認められる必要があります。
長期間の別居は「婚姻を継続し難い重大な事由」を判断する事情の一つになり得ますが、単身赴任で別居していたというだけで直ちに離婚が認められるわけではありません。
そのため、章代さんは離婚を切り出されたからといって、その場で結論を出す必要はありません。まずは今後の生活設計を立て、離婚条件を検討する時間を確保することが大切です。
2. 財産分与・年金分割・住まいの条件を考える
財産分与では、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持した財産を対象とし、双方の寄与が同程度と考えられる場合には、原則として2分の1ずつを基本に清算します。夫名義の預貯金や有価証券、自宅などに加え、和彦さんは定年直前なので、将来受け取る退職金が財産分与の対象となるかについても確認が必要です。
住まいについては、自宅を受け取れば住居費の心配は減りますが、固定資産税や修繕費は自己負担です。広すぎる家を売却して住み替える選択肢も含めて比較検討しましょう。
なお、2026年4月1日以降の離婚では、財産分与と年金分割の請求期限が離婚から5年に延びました。とはいえ、時間が経つほど財産の把握は難しくなるため、離婚前からの資料収集が望ましいといえます。
3. 「離婚まで」「65歳まで」「65歳以降」の見通しを立てる
離婚までは婚姻費用で暮らせても、離婚後から65歳までは年金収入がなく、60歳までは国民年金保険料の負担も加わります。この期間は、財産分与で受け取ったお金と自分で働いて得た収入で乗り切ることになります。
65歳以降は年金が柱になりますが、年金分割を受けても生活費の全額を賄うことは厳しいと考えられます。そのため、今から生活費の水準を大きく見直す必要があります。50代からでも、パートなどで厚生年金に加入して働けば、自分の年金を上乗せできます。
一方で、婚姻を続けていれば、夫が亡くなった際に遺族年金を受け取れる可能性があるなど、離婚しない場合との経済的な違いもあります。どちらを選ぶにしても、数字を把握したうえで夫と話し合うことが、章代さんのこれからの暮らしを守る第一歩になるでしょう。
松田聡子
CFP®
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