教育費と老後資金の板挟み。「親がどこまで負担するか」が重要

晩婚化が進み、30代後半以降で子どもを授かる人も多いものです。そうなると、今回の正弘さん夫婦のように子どもの進学時期と親の定年退職が重なり、同時に考えなければならないことが増えます。

文部科学省が公表した「私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査」によると、私立大学の初年度納付金は文科系学部で平均約130万円、理科系学部では約172万円となっています。さらに、同省の令和5年度調査では、私立大学薬学部の初年度納付金は平均約208万円。授業料だけでなく、入学料や施設設備費なども必要になります。

薬剤師を養成する薬学課程は6年制のため、4年制大学と比較して在学期間が長く、その分、教育費の負担も大きくなります。

今回のように子どもが県外の大学へ進学している場合は、学費のほかに家賃や生活費の負担も加わることに。施設設備費などを含めると、6年間で約2,000万円程度の費用を見積もっておく必要があります。

ここで考えたいのは、その教育費をすべて親が負担しなければならないのかということです。

「子どもに借金を背負わせたくない」

そう考える親御さんも多いでしょう。しかし、子どもの教育費を優先するあまり、親自身の生活が立ち行かなくなってしまっては本末転倒です。

奨学金制度の利用や年金の繰下げ受給を検討する

子ども自身に教育費を負担してもらう場合は、日本学生支援機構の奨学金を活用することも選択肢の一つです。返還が必要な貸与型奨学金だけでなく、家計などの条件を満たせば給付型奨学金や授業料減免を利用できる場合もあります。

貸与型を利用する場合でも、卒業後の返還をすべて子どもに任せるのではなく、親の家計に余裕がある範囲で一部を援助する方法も考えられます。

また、正弘さんには現時点で2,000万円の貯蓄があり、65歳では退職金として1,000万円を受け取れる予定です。だからといって、単純に「3,000万円あるから安心」とも「教育費が高いから75歳まで働かなければならない」とも判断できません。

まず確認すべきなのは、夫婦の年金額・今後の生活費・子どもの教育費・退職金・現在の金融資産から、将来の家計をシミュレーションしてみることです。その結果、教育費の一部に奨学金を利用すれば65歳で退職できるかもしれませんし、あるいは、週3日程度の仕事を続けることで、資産の取り崩しを抑えながら生活できる可能性もあります。

公的年金についても、受給開始を遅らせる繰下げ受給によって年金額を増やす方法がありますし、現在ある資産を活用し運用していくことも考えることができます。

重要なのは「何歳までにいくら稼げばいいのか」を明確にすること

重要なのは、「いつまで働かなければならないのか」と不安に思い続けるのではなく、「何歳まで、いくら稼げば希望する生活が実現できるのか」を数字で明確にすることです。

子どもの将来を応援することと、自分たちの老後を守ることは、必ずしも二者択一ではありません。

「教育費がかかるから働き続けるしかない」と決めつける前に、今ある資産と将来の収入・支出を数字にし、子どもたちの希望と、自分たちが望む老後生活の両方を実現できる方法をあらゆる手段を活用しながら冷静に考えてみることが大事です。

小川 洋平
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