就労経験ゼロの30歳息子…親に頼る「静かな生活」

息子は大学を卒業後、就職するかと思いきや、就職活動すらせず、家でダラダラと過ごしてきました。Aさんが心配して息子に「なぜ就活をしないのか」と聞くと、「なんとなく」「もう少し考えてから」とはぐらかされるばかり。その後、コロナ禍に突入したことで就職環境はますます厳しくなり、社会に出る機会を逃してしまったのです。

最初は体調が悪いのかと心配していましたが、精神的にも身体的にも問題はなさそうな様子。息子の毎日は、2階の自室でパソコンをいじって過ごすことが中心です。Aさんが休みの日に家にいると、息子の部屋から話し声や笑い声が聞こえることもあります。時折、大学時代の友人と飲みに出掛けることもあり、引きこもっているわけではありません。

息子は親の収入に頼って暮らしているものの、小遣いが欲しいといってくることはほとんどありません。たまに友人と会う際、「5,000円くらい飲み代が欲しい」という程度。普段は冷蔵庫にあるもので自炊し、自室の掃除は自分でするなど、手に余るというほどの問題行動は起こしません。

しかし、そんな息子もいまや30歳。一度も働いた経験がないまま年齢を重ねていく姿を見ているため、Aさんは「このままでは、息子のせいでいつか老後破産してしまうのではないか」という恐怖に苛まれるようになりました。実際には十分な資金があるにもかかわらず、「お金が足りないかもしれない」という潜在的な不安に陥っていたのです。

いままでAさんは何度か、息子にいまの生活を改めるよう𠮟責したことがありました。しかし、その度に息子は部屋にこもり、数日顔を合わせない日々が続くだけ。会話すらなくなり、「今度こそ家族の絆が途絶えてしまうのでは」という焦りが募ります。

80代の親が、自立できない50代の子どもを支える「8050問題」は、社会問題として広く知られるようになりました。ニュースなどでこの問題を見聞きするからこそ、Aさんは「このままでは子どもが社会から完全に孤立してしまう」「自分たちが死んだあと、残された息子はどう生きていくのか」という将来への深い懸念を抱いているのです。

専門家への相談で見えた「本当の課題」

不安を抱えきれなくなったAさんは、妻とともにまずはお金の不安を解消するために専門家へ相談することにしました。

家計状況を客観的に分析してもらった結果、現役時代に共働きで頑張ってきたおかげで、息子にも生活費が掛かっても年金収入だけで十分に賄えていることが明確になりました。

これまで通り質素倹約に努め、生活費を月20万円程度に抑えていけば、月額33万円ある年金収入だけで毎月約13万円が手元に残りるため、親の生存中は貯蓄を取り崩す心配がありません。

さらに、残った年金から毎月10万円を仮に年利3%で15年間(80歳まで)積み立てた場合、それだけで約2,200万円の資産が形成できます。手元にある退職金やこれまでの貯蓄2,000万円もそのまま残るため、もしもの病気や介護への備えも十分です。

つまり、「老後破産するかもしれない」というお金の心配は、実は不要だったことがわかりました。

自立できない息子の将来に対する課題は、確かに残っています。しかし相談を経て、無理に就労を急かして揉め、親子関係を完全に壊してしまうより、いまは関係性を維持しながら長い目で見守っていくアプローチが必要だとAさんは考えるようになりました。

Aさん家族が直面している根本的な課題は、親が焦るのではなく、息子にじっくりと寄り添い続けることなのかもしれません。

「お金の不安」と「家族の悩み」は密接に絡み合っています。家庭ごとに抱えている事情や解決策は異なるため、漠然とした不安に押しつぶされそうになったときは、専門家等の第三者に相談して現状を正しく把握してみてはいかがでしょうか。

〈参照・出典〉

公益財団法人生命保障文化センター:2025(令和7)年度「生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/research/report/chousa10th.html

厚生労働省:令和8年度の年金額改定についてお知らせします
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001672868.pdf

三藤 桂子
合同会社ミコサポ
代表

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