老後生活に不安を抱える人は8割以上に上りますが、なかには「十分な年金や貯蓄があるにもかかわらず、過剰な老後不安に陥っている」ケースも少なくありません。A家の事例から、お金の不安と密接に結びつく家族の問題について、合同会社ミコサポ代表の三藤桂子氏が紐解いていきます。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。
実家2階でぼんやり生きる無職・30歳息子からの無心「飲み代5,000円くれよ」…老後破産を心配する年金月33万円・65歳夫婦に、FPが「実はお金の心配は不要」と告げたワケ
8割以上が抱える「老後の不安」
公益財団法人生命保険文化センターの2024(令和7)年度「生活保障に関する調査」によると、老後生活に対し、「不安感あり」と回答した人は83.2%、「不安感なし」は15.4%と、8割以上の人が老後生活に対する不安を抱えている結果となっています。Aさん(65歳)も「不安感あり」と考えているなかの一人です。
なぜ不安を感じているのでしょうか。同調査によれば、「公的年金だけでは不十分」が最も多く、ほかにも「日常生活に支障が出る」「自助努力による準備が不足する」「退職金や企業年金だけでは不十分」などが挙げられています。
Aさんは同級生の妻と、30歳の息子との3人暮らしです。夫婦ともに定年まで正社員として共働きを続けてきました。妻は60歳の定年を機に「体力的にゆっくりしたい」と週3日のパート勤務に働き方を変えましたが、Aさんは65歳まで継続雇用で働き続けることに。老後の不安を少しでも解消したいと思っていたからです。
いよいよ本格的なリタイアが近づき、「65歳からの年金はどのくらいになるのだろう。足りないようなら受給を遅らせて増額する『繰下げ受給』を利用しようか」と考えたAさんは、自宅近くの年金事務所で試算を出してもらうことにします。
Aさんは大学卒業後、ずっと厚生年金に加入した働き方を続けてきたので、65歳からの年金は230万円(月額19万円)という結果に。妻の年金は170万円(月額14万円)で、夫婦合わせて年額400万円(月額33万円)になります。これは、厚生労働省が発表している夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額23万7,279円を上回る金額です。
もともと質素倹約を心がけてきたA家の日常生活費は、月に20万円程度です。「老後の最低日常生活費は平均23.9万円」という調査結果と比較しても、月額33万円の年金収入があれば、余裕のある生活が送れる計算になります。
本来であれば、老後にそれほどの不安を感じる必要もなさそうですが、Aさんは不安で仕方ないようです。なぜでしょうか? それは、同居する無職の一人息子の存在にあります。