父の口癖「うちに財産はない」…遺産ゼロを信じて疑わなかった57歳息子

「うちに財産はないからあてにするなよ」

サトルさん(仮名・57歳)は、生前の父から口癖のように言われていました。実際、年金を受け取っていた口座残高は100万円に満たないもので、自宅も地方の小さな戸建てのみ。相続人の母と息子は「相続税には縁がない」と信じて疑いませんでした。

父が愛用していた書斎は、亡くなったあとも長い間そのままでした。使い込まれた万年筆、日焼けした将棋の本、老眼鏡。母が「全部そのままにしておいて」と処分を拒み、思い出の部屋として残していたためです。

だからこそ、まさかこの静かな書斎が、後に「財産隠し」を疑われる舞台になるとは思いもよらなかったのです。

書斎から現金5,000万円…母の介護費用に使った半年後に届いた税務調査

転機は一年後でした。母に介護が必要となり、実家を片づけることになったサトルさん。

手つかずの書斎を整理していると、本棚の奥から古い封筒の束が出てきました。そのなかには、なんと約5,000万円の現金が。なんのお金なのか、なぜ家族に隠していたのか。今となってはわかりません。

あまりの額に言葉を失いながらも、「質素な生活をしながら父が母のためにコツコツと残したお金に違いない。母のために使えばいいだろう」そう都合よく自分を納得させました。

ところが、半年ほど経ったころ税務署から相続税の税務調査の連絡が入りました。父名義の預金口座に入金された退職金が現金で引き出された記録が残っているというのです。それは年金用とは別の、サトルさんが把握していない口座でした。

しかし、隠し財産は申告せず、5,000万円の大半は母の介護施設入居一時金の支払いなどに充ててしまっていました。

「引き出したお金は、どこへ?」という調査官の問いに、サトルさんは青ざめました。