厚生労働省の『共生社会に向けた認知症施策の動向』によると、2022年時点での認知症高齢者は約443万人、軽度認知障害(MCI)の高齢者は約559万人と推計されています。認知症の進行による判断能力の低下は、家族を巻き込んでご自身が長年かけて築いてきた財産を巡るトラブルの引き金になりやすいです。本記事では、善意で叔母を世話していた38歳女性が、「勝手にお金を使っている」と親族からあらぬ疑いをかけられた事例をもとに、認知症に伴う財産管理の注意点と対策をCFPの山原美起子氏が解説します。
叔父さん、ひどすぎますよ…〈年金18万円・総資産6,300万円〉認知症の叔母を世話する38歳姪が悔し涙。“遺産への思惑”が透ける叔父の「非情なひと言」【CFPが解説】
【CFPが解説】口約束による財産管理が招く「親族トラブル」
明確な契約やルールがないまま認知症の方の財産管理に関わると、たとえ善意からの行いであっても、あらぬ疑念を持たれて深刻な対立に発展するおそれがあります。
本人の判断能力が低下した状態での選択肢となるのが「法定後見制度」です。家庭裁判所が成年後見人等を選任し、本人の財産管理や介護サービスなどの契約を支援します。裁判所の監督下に置かれるため、透明性の高い管理が実現できます。
ただし、誰が選ばれるかは家庭裁判所が決定するため、親族の希望が叶うとは限りません。弁護士等の専門家が選ばれれば毎月の報酬が発生し続けます。
また、親族が選ばれたとしても財産の使い道が厳しく制限される傾向にあります。
手遅れになる前に…家族信託と任意後見制度による「備え」
十分な判断能力があるうちに検討しておきたいのが、信頼できる家族等と契約を結んで本人の判断能力が低下したあとも契約内容に従って財産管理を続けられる「家族信託」や、将来支援してくれる人と支援内容をあらかじめ公正証書で決めておく「任意後見制度」です。
どちらも信頼できる相手を指名できる安心感があり、チェック体制によって親族間のトラブルや使い込みを未然に防ぐ効果が期待できます。
どちらか一方を選ぶというよりも、柔軟な財産管理は「家族信託」、生活や介護に関する契約などの身上保護は「任意後見制度」というように、組み合わせて利用することで支援の空白を減らすことができます。
老後対策というと「いくら貯金が必要か」という側面に目が向きがちですが、人生100年時代においては「自分の財産を必要なときに自分のために使える仕組みづくり」がそれ以上に重要になりつつあります。
「まだ自分は大丈夫」と思っている今こそ、資産形成と認知症対策をセットで整えるベストなタイミングと言えるのではないでしょうか。
山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー
kokorono MIRAI labo.認定 家族信託コンサルタント資格Ⓡ
※個人の特定を避けるため、登場人物の情報等は一部変更しています。
※本稿は2026年9月時点の制度を前提としています。2026年6月には成年後見制度を見直す改正法が公布されており、今後の施行に伴って制度の詳細な内容が変わる可能性があります。
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