「老後資金は足りるだろうか」「子どもの教育費はどう準備すればよいのか」「いつかはマイホームを購入したい」。 多くの人が将来への期待と不安を抱えながら生活しています。しかし、日々の収入は日常の支出に吸収されやすく、将来のための資金準備は後回しになりやすい構造の中にあります。そこで重要になるのが、「人生には目的別の“お金のダム”が必要である」という考え方です。今回は、資産運用の本当の意味についてFPの前田敏氏が解説します。
「投資はしてるけどお金の不安がなくならない…」長期資産形成の本質は〈3つのダム〉を使い分けること【資産運用会社32年勤務のFPが解説】

人生には絶えず「お金の川」が流れている

給与、賞与、事業収入、年金──私たちの人生には、さまざまな形でお金が流れ込んできます。これは山から海へと流れる川のようなもの。もし流れてきた水をすべて使い切ってしまえば、渇水の時期に困ってしまいます。

 

しかし、流入する水の一部を計画的に貯めておけば、必要なときに活用できます。現実の社会でダムが水不足を防ぐように、人生にも「お金を蓄えるダム」が不可欠です。


資産形成とは、単にお金を増やす行為ではありません。将来必要になる資金のために、日々の収入から少しずつ水を引き込み、自分専用のダムを築くプロセスなのです。
 

目的によって必要なダムは異なる

ダムには治水・発電・農業用水など多様な役割があるように、資産形成におけるダムにも目的別の設計が求められます。ここでは代表的な3つのダムを整理します。

 

老後資金専用の「DCダム※1 (企業型DC・iDeCo)」

老後資金づくりに特化した年金ダムです。 企業型DCと個人型DC(iDeCo)は、どちらも「確定拠出年金」という同じ構造を持ち、掛金が所得控除となります。運用益も非課税で、受取時にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されるため、拠出・運用・受取の三段階で非常に大きな税制メリットがあります。一方、原則60歳まで引き出せないという特徴があります。

※1 DCダム=老後資金専用の長期ダム

 

教育資金・住宅購入資金など幅広い目的に使える「NISAダム※2

運用益が非課税となり、成長資産を育てるのに適したダムです。 教育資金、住宅購入資金、将来の資産形成など、多様な目的に対応できる柔軟性があります。

※2 NISAダム…将来の選択肢を広げる成長型ダム

 

病気・失業などの緊急時に備える「預金ダム※3

生活防衛資金を蓄えるためのダムです。 いつでも引き出せる流動性が最大の特徴で、投資とは別に確保しておくべき安全資金です。

※3 預金ダム…いざという時の安全弁