高額の住宅ローンを組んだマイホームが終の棲家になる——。その「当たり前」の前提が、いま静かに変わりつつあります。住まいの選択肢は、持ち家だけではないのかもしれません。本記事ではFPオフィスツクル代表・内田英子氏がAさんの事例とともに、人生100年時代に知っておくべき「住まいの考え方」について解説します。
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「買うか借りるか」より重要なこと
もちろん、持ち家には持ち家のよさがあります。自分たちの住まいを確保できる安心感があり、間取りや設備にも手を入れやすい。修繕費用や税金などの負担、資産の流動性が低くなりやすいリスクはある一方、住宅ローンを完済すれば、その後の住居費を抑えやすいという利点もあります。
対する賃貸など「所有しない」住まい方には、仕事や家族構成、身体の状態が変わったときに、住む場所や家の広さを変えやすいという利点があります。家賃が上がったり、希望する家が借りられなかったりするリスクはあるものの、大きな修繕費用の負担をさけることができるでしょう。どちらが正解とはいえません。
だからこそ、持ち家か賃貸か、といった住まいを検討するときには、将来残しておきたい選択肢を現在のライフステージから逆算し、大きすぎるリスクを負わなくてすむ住まい方をフラットに考えてみることが重要です。
人生には、家を買う以外にも、必要になる大きなお金は複数あります。子どもの教育費や老後生活資金はその代表的なものですが、近年の物価上昇下では、家計の経済的な余力も重要でしょう。
住宅ローン契約を済ませてしまうと、負債が確定します。返済額は自分たちの都合で簡単に減らすことができません。そのうえ、物件価格に見合った修繕費や火災保険料・地震保険料といった維持費も必要となります。資産形成にあてるお金が不足する場合は、収入が大きく増えない限り、家以外の費用を減らすことで捻出することになります。
住まいの選択は、その後に持てる人生の選択肢に大きな影響を与えうる決断でもあるのです。人生は長くなり、これから先になにが起こるのかを正確に予測することはできませんが、だからこそ時代の変化についていくことができる、家計の柔軟性を長く維持できることに価値が生まれます。
「どの家を選ぶか」だけではなく、その選択の先に、どんな未来の選択肢を残しておきたいのか。まずはそこから夫婦や家族で話してみてもよいのではないでしょうか。
※1 国土交通省「21世紀の豊かな生活を支える住宅・宅地政策について」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/press/h11/110920-3.htm
※2 財務省
「令和8年度の国民負担率を公表します」
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/20260305.html
「国民負担率(対国民所得比)の推移」
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/futanritsu/sy202603a.pdf
※3 国土交通省「住生活基本計画(全国計画)(令和8年3月27日閣議決定)」
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000032.html
内田 英子
FPオフィスツクル代表