親の一人暮らしに不安を覚え、「見守りのある高齢者住宅に入れば安心」と考える家族は少なくありません。しかし、バリアフリーで安否確認がある「サ高住」で「安全に暮らす」ことと、「誰かと楽しく会話して暮らす」ことは別問題です。本記事では、母親の安全を思ってサ高住への入居を勧めたものの、思いがけない形で親の「孤独」に気づかされた息子の事例をもとに、元介護施設職員でFPの武田拓也氏が、失敗しない高齢者住宅選びについて解説します。
「母さん、どうしてここに!?」サ高住に入居させたはずの82歳母が、タクシーで61歳息子宅へ突然現れたワケ【元介護施設職員のFPが解説】
【元介護施設職員のFPが解説】サ高住は「人間関係まで提供してくれる場所」ではない
ここで理解しておきたいのが、サ高住の仕組みです。「サービス付き高齢者向け住宅」は高齢者向けの「住宅」です。必須となるのは安否確認と生活相談であり、それ以外の食事、介護、家事援助などのサービス内容は施設によって異なります。
厚生労働省も、どのようなサービスが利用できるかについて入居前に事業者から説明を受け、比較検討することが重要だとしています。
つまり、「スタッフがいる=毎日たくさん会話してくれる」「入居者が多い=自然に友達ができる」「レクリエーションがある=孤独にならない」とは限らないのです。
人間関係を築くことが苦手な人であれば、入居者が100人いる施設でも孤独になる可能性があります。
むしろ長年暮らした地域を離れ、近所の友人、行きつけのスーパー、かかりつけ医、趣味仲間とのつながりを一度に失ってしまうケースもあります。
高齢者の孤独を考える際には「一人で暮らしているか」だけを見るべきではありません。大切なのは「周囲に何人いるか」ではなく、「自分を気にかけてくれる人がいると感じられるか」です。
一人暮らしでも毎日家族や友人と電話をし、週に何度か外出して地域の人と交流しているのであれば、本人は孤独を感じていないかもしれません。
「失敗しない高齢者住宅選び」…入居前に確認すべき4つのポイント
高齢者住宅を選ぶとき、家族はどうしても「月額費用」「介護対応」「医療体制」「設備」に目が向きますが、「入居後にどのような生活を送るのか」という視点も重要です。
たとえば、入居前に次のような点を確認しておくとよいでしょう。
1.食事は入居者同士で食べるのか
居室で一人で食べることが中心なのか、共用食堂で交流できるのかによって生活は大きく変わります。
2.レクリエーションはどの程度あるのか
体操、囲碁、麻雀、カラオケ、料理、季節行事など、本人が参加したくなる活動があるか確認します。
3.入居者同士の交流があるか
見学時には設備だけでなく、食堂や談話室が実際に使われているかも見てください。
4.家族が訪問しやすい場所か
月額1万円、2万円安い住宅を選んでも、遠方になったことで家族がほとんど訪問できなくなれば、それが本人にとって本当によい選択とは限りません。