「便利な環境にいれば幸せ」子世代とのすれ違い…親が真に求める「人との交流」

子世代は「裕福な親がシニア向けの便利な環境にいる=幸せな老後」と想定しがちです。しかし、内閣府の『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)』によると、高齢の日本人女性が生きがいを感じるのは「孫など家族との団らんの時」「友人・知人との会食、雑談している時」など、大半が「人との交流」によるものです。

とはいえ、多忙な子世代が頻繁に親元を訪問するのは難しいかもしれません。孤独になりがちな老親に寄り添う方法として、小まめなメール連絡やビデオ通話など、負担の少ない意思疎通の手段を家族で共有しておきましょう。

また、昔からの友人や地域との接点が完全に途切れてしまわない立地や距離感も慎重に検討し、気軽に立ち寄れる場所や相談先を生活設計に組み込んでおくとよいでしょう。

老後を迎えてから、まったく新しい人間関係を一から構築することは、思いのほかエネルギーを要するものです。

シニア向け住宅での暮らしは、安全性や利便性の面で数多くのメリットがありますが、手厚い共用施設やイベントが用意された環境でも、自ら周囲と関係を築くことが苦手な場合、むしろ周囲の賑やかさと自分を比べることで孤独感がより一層深まることも考えられます。

住み替えの後悔を防ぐためには、「そこで誰と、どのような毎日を送るのか」という生活の実態まで見据えることが不可欠です。見学時には共用スペースでの会話の様子や雰囲気を観察し、リアルな交流の場を自分の目で確認しましょう。

【CFPの助言】施設入居前に確認すべき「介護が必要になったときの体制」

厚生労働省の『健康寿命の令和4年値について』では、平均寿命と健康寿命の差は男性8.49年、女性11.63年でした。入居時は元気であっても、将来的に長い介護生活になる可能性があります。重度の介護が必要になった場合でも住み続けられるのか、「介護が必要になったときの体制」についての確認は不可欠です。

たとえば、認知症が進行して共有スペースでの交流が難しくなり、施設側から介護職員による個別ケアの強化や、最終的には介護老健施設への転居を勧められるケースもあります。十分な老後資金を準備できたと思ってシニア向けマンションを購入しても、想定外の介護施設への移転や追加サービス費用が発生すれば、家計が破綻し、家族にもその影響が及ぶ可能性が考えられます。

老後の不安を減らすための住み替えは、前向きで有効な選択肢の一つです。

しかし、取り返しのつかない後悔とならないためにも、一人で性急な判断をせず、老後費用の十分なシミュレーションを行う慎重さが必要です。そのうえで、ご自身のいきがいや心地よい老後の暮らし方について家族に相談しながら一つずつ具体化してはいかがでしょうか。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー

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