息子を心配するほど減っていく「老後資金」

美智子さん夫婦の年金収入は月約24万円。以前は雄太さんが実家に毎月5万円の生活費を入れていたため、それほど家計に不安を感じていませんでした。しかし、雄太さんが東京へ転勤するとその5万円がなくなり、家計も大きくマイナスに転じ始めたのでした。

夫婦の生活費は月30万円ほど。単純に考えても、年金だけでは毎月約6万円の赤字です。そこへ息子に会いに行くための交通費や仕送りが加わりました。

美智子さんの住む地域から東京まで、新幹線を利用すると往復で約3万円、それでも美智子さんは月に1回、多いときには2回訪れるようになっていました。さらに地元の野菜や食料品、日用品を購入して宅配便で送る費用も、夫婦の家計から出ていきます。

「また東京へ行くのか? お前、もういい加減にしたらどうだ」

夫からそう言われ、注意されても聞く耳持たずです。

そんな生活を約2年間続けた結果、変化は預金通帳にはっきり表れます。

【2年間の貯金取り崩しの内訳】
・新幹線代:往復 約3万円×18回=約54万円
・食料や日用品の仕送り(商品+送料)=約22万円
・年金で不足する自分たちの生活費の補填:約6万円×24ヵ月=約144万円
・その他、突発的な出費:約40万円

=おおよそ260万円

かつて1,500万円あった預貯金は、1,200万円台前半まで減っていました。そのほかに、夫婦それぞれの葬儀費用などを想定して契約した生命保険が合計400万円ほどありますが、自由に使える預貯金は想像以上のペースで減っていたのです。

「こんなに減っていたの……?」

あらためて支出を計算した美智子さんにも、ようやく不安が芽生えました。

それでも、長年息子の身の回りのことをしてきた美智子さんにとって、「何もしない」という選択は簡単ではありません。いつしか息子の世話をすること自体が、自分の役割のようになっていたのです。

東京へ行く、行かないをめぐって夫婦喧嘩も増えていきました。 息子を心配するあまり、今度は自分たち夫婦の老後が揺らぎ始めていたのです。