長年、夫婦生活をともにしたあとに、定年などをきっかけに「熟年離婚」を選ぶケースが増えています。しかし、シニア世代が熟年離婚を検討する際には、離婚後に直面する「老後のお金」とあらかじめ向き合っておくことが欠かせません。65歳元会社員と58歳妻の事例をもとに、熟年離婚の注意点と老後の資金計画のポイントについて、CFPの山﨑裕佳子氏が解説します。
「今までお疲れ様でした。一つだけお願いが…」退職金2,300万円・65歳夫、定年退職の日に花束を抱えて帰宅。豪華な晩餐も佳境…58歳妻が突きつけた〈衝撃の宣告〉【CFPが解説】
【CFPの助言】財産分与、年金分割…離婚前に確認すべき「老後のお金」
2002年をピークに離婚件数は減少傾向にありますが、離婚を同居期間別の構成割合で見ると、同居期間が20年以上のカップルの「熟年離婚」比率が増えています。
シニア世代の場合、夫の収入で家計を支えていた家庭も少なくなく、女性のほうが経済的な困難に直面しがちです。そのため、離婚後に自身の住居や収入が確保できるのか、20~30年先まで生活できる資産があるのかをあらかじめシミュレーションしておく必要があります。
では、コウイチさんとエツコさんの場合はどうでしょうか。
まず、コウイチさんには5,000万円の金融資産があります。年金は月額20万円です。一見すると余裕のある老後生活が送れそうですが、離婚となれば「財産分与」や「年金分割」により、この前提は見直す必要があります。
この先、医療費や介護費などまとまった支出の発生が予測されることから、一人暮らしのライフプランとキャッシュフローを立て直しましょう。
その際は、生活費や住居費といった「必要不可欠な費用」、医療・介護など「必要かもしれない費用」、趣味や旅行など「欲しいもの・やりたいことの費用」に分類し予算を立ててみることが大切です。
また、財産分与については、預貯金だけが対象ではありません。自宅を含めた不動産、有価証券、退職金など、婚姻中に築いた財産をすべて整理する必要があります。
一方、エツコさんは、さらに慎重な資金計画が必要です。
平均寿命から逆算すると、現在58歳のエツコさんは、離婚後の生活が30年以上続く可能性があります。仮に財産分与でまとまった資金を受け取ったとしても、「安心」と考えるのは早計です。
仮に2,000万円受け取ったとしても、毎月10万円を生活費として使えば、単純計算で16年で底をつきます。実際には年金や場合によっては運用益などの収入があるためこのとおりにはなりませんが、老後資金を延命させる方法を考えるべきでしょう。
老後の収入の柱が年金であることを考えれば、年金を増やす努力をするのも一つの手です。実際、60歳以降の就業率は上がっており、2025年には60歳~64歳の女性の65%が就業しています。
厚生年金への加入要件は段階的に拡大しており、現在は従業員51人以上の企業で週20時間以上働くと厚生年金に加入できます。
仮に、正社員や派遣社員などで月収25万円、65歳まで6年間働くことができれば、65歳から受け取ることのできる年金は、年間約10.2万円増える計算(※)です。月にすると8,500円程度ですが、年金は生涯受給できるものであるため、老後生活に与える影響は決して小さくありません。
(※) 標準報酬月額×5.481/1000×加入月数で計算