近年、著名人や投資家になりすました動画広告からLINEなどのグループチャットに誘導し、偽の投資アプリをインストールさせる「SNS型投資詐欺」が増えています。AIを使った広告であたかも本人が宣伝しているように思わせ、はじめは少額の利益が手元に入るなど、年々その詐欺の手口は巧妙化しています。65歳男性の事例を通して、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が投資詐欺の注意点について解説します。
妻になんて詫びれば…〈退職金1,800万円〉65歳男性の絶望。「老後資金の1,000万円」を失い、膝から崩れ落ちたワケ【弁護士が警告】
妻になんて詫びれば…「投資詐欺」と気づくも、時すでに遅し
アプリ上の資産は順調に増え続け、あっという間に3,000万円を超えました。ケンゾウさんは、「これで老後資金は十分だ」と、利益を確定させて全額を引き出そうと出金申請を行いました。
しかし、ここでアシスタントの態度が急変します。
「利益が高額なため、引き出す前に税金と保証金として400万円を振り込んでいただく必要があります」
違和感を覚えたケンゾウさんは、妻に事の顛末を相談。すると、妻は血相を変えてこういいます。
「あんた、それ詐欺じゃないの!」
あわてて警察署へ駆け込みましたが、時すでに遅し。LINEグループからは強制退会させられ、投資アプリもエラー画面が表示されるだけでいっさい開けません。警察官から「典型的な詐欺の手口です。お金が戻ってくる可能性は低いでしょう」と告げられた瞬間、ケンゾウさんはその場に膝から崩れ落ちました。
「数十年必死に働いたお金が……。妻になんて詫びればいいのか、いまでも現実を受け止めきれません」
画面上の偽りの利益に心を奪われ、冷静な判断力を失ってしまった代償はあまりにも大きく、老後の暮らしに暗雲が立ち込めています。
【弁護士が警告】年々手口が巧妙化する「SNS型投資詐欺」
昨今のSNS型投資詐欺で特に注意したいのは、最初に少額の利益を実際に出金させ、「本当に儲かる」「いつでも出金できる」と信用させている点です。
これは、あとから集めた資金などを使って一部の利益を還元し、実際に運用されているように見せる「ポンジ・スキーム」でもみられる手口です。一度お金が戻ってくると安心してしまい、その後の高額な送金につながりやすくなります。
また、「出金するには税金や保証金が必要」と追加送金を求められるのも、投資詐欺でよくみられるパターンです。この要求に応じて送金しても、画面上の金額が手元に戻ることはありません。
被害に気づいた場合には、警察や振込先金融機関へ速やかに連絡しましょう。状況によっては弁護士へ法律相談するのもひとつの手です。もっとも、弁護士が関与しても、すでに送金されたお金を取り戻すことが難しいケースも少なくありません。
さらに、最近では「弁護士に依頼すれば被害金を回収できる」などとうたい、高額な着手金を支払わせる二次被害も問題になっています。被害後ほど焦って判断しがちですが、「必ず取り戻せる」といった説明にも注意が必要です。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士
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