【CFPが解説】不動産は「名義人」が負う税務上の責任が重い

ここで、多くの方は「実際に家賃を使っていた妹が税金を払うべきではないか」と考えるでしょう。

たしかに、税金には名義だけで判断せず、実際に所得を得た人を課税対象とする「実質所得者課税の原則」があります。しかし、不動産所得の場合は、収益の源となる不動産の“真の所有者”が誰かが重要になります。

共有名義であれば持分に応じて所得を分けますが、本事例のように、法律上も実質上もサワコさんが単独所有者であり、妹は単に管理を任されていただけであれば、家賃収入は原則としてサワコさんに帰属すると判断される可能性が高いです。

受け取った家賃を妹が使い込んでいたとしても、それは姉妹間の精算や返還請求の問題であって、税務上の申告義務がなくなるわけではありません。

とはいえ、督促状が届く段階ともなると、本来納めるべき所得税等に加え、申告しなかったことに対する「無申告加算税」や、納付が遅れたことによる「延滞税」が発生します。なお、延滞税は納付日まで増え続けるため、放置した期間が長いほど負担は重くなります。

翌年度以降生じ得る住民税の増額分なども合わせると、サワコさんの負担額は700万円超に膨れ上がっていました。最終的に、自身の預貯金だけでは納税資金を用意できず、サワコさんは実家のアパートを手放して支払うことに。

退去せざるを得なくなった妹とは互いに「あんたのせいで!」と責め合い、結果として親から受け継いだ財産も、家族の絆も消えてしまったのでした。

精度向上で追徴税額過去最高…AI時代の「税務調査」に備えるために

国税庁が公表する「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によれば、税務調査はAIを活用した調査先の選定などにより効率化が進み、所得税の追徴税額は1,431億円と過去最高を記録しています。

注目すべきは、調査の「量」だけでなく「質」も変化している点です。国税当局はAIを活用し、申告内容や第三者から提出される支払調書、登記情報、過去の申告・調査で蓄積された資料などを分析し、不自然な点がある案件を優先的に抽出しています。

そのため、「少額だから見つからないだろう」「現金取引ならわからないだろう」といった“逃げ道”は、これまで以上に通用しにくくなっています。

特に、相続で取得した不動産から生じる家賃収入などは、データの照合によって申告漏れを指摘される可能性があります。

名義人としては、最低限の責任として物件の現状を把握しておきましょう。もしも管理を他者に任せる場合は、たとえ家族であっても「管理委託契約書」や「覚書」を交わし、収入の分配方法や経費の負担、報告の頻度などを明確にしたうえで、正確な申告を行うことが、思わぬ追徴課税を防ぐ近道となります。

山原 美起子
株式会社FAMORE
ファイナンシャル・プランナー

【注目のセミナー情報】
【国内不動産投資】8月8日(土)オンライン開催

《短期償却×安定運用》
実質利回り15%前後も狙える「トランクルーム投資」

【事業投資】8月13日(木)オンライン開催
未経験・1人運営でも目指せる!
『買取大吉』の高収益モデルの全貌