親の介護問題は、ある日突然降りかかってきます。とくに「家や財産を継ぐのは長男」という古い価値観をもつ親の場合、離れて暮らす娘には介護を押しつけ、長男には財産を相続させるという理不尽なケースもあるでしょう。弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士・山村暢彦氏が、実家の全財産3,800万円は長男に譲ると宣告された53歳長女の事例を通じて、理不尽な介護の押しつけから自分自身の人生や権利を守るための対処法について解説します。
「私はただの介護要員ですか…」〈全財産3,800万円〉を長男に継がせようとする父。53歳長女が絶望した「理不尽な要求」【弁護士の助言】
都合のよい介護要員ですか…「長男至上主義」の父の扱いに絶望
「財産はすべて弟に渡すけれど、介護の苦労は私に背負えということ……?」
サチコさんはあまりの理不尽さに言葉を失いました。長年疎遠だった娘に対する当てつけなのかもしれません。
サチコさんは、家を継ぐつもりもなければ、親の財産を当てにしていたわけでもありません。しかし、弟は介護をしない上で約3,800万円の全財産を相続し、自分は仕事を失って介護要員として扱われるという現実には、どうしても納得がいきませんでした。言われるがまま実家へ戻れば、最後まで都合よく搾取されるのは目に見えています。
親の古い価値観である「長男至上主義」の犠牲になることを拒むべきか、それとも親族からの非難を覚悟で相続の権利を主張するべきか。サチコさんは今、厳しい現実を前に誰に助けを求めればよいのかわからず、一人で絶望しています。
【弁護士の助言】「財産は長男へ」でも娘に権利はあるのか?親の介護との向き合い方
本件のような「家は長男が継ぎ、介護は長女が担う」という家父長制度の名残ともいえる価値観は、現在でも親族間の相続トラブルを生む大きな原因の一つです。長年育ててもらった親の介護をしたいという気持ちと、自分自身の仕事や生活を守らなければならないという現実との間で葛藤する方も少なくありません。
法律上は、親が遺言書を作成していれば一定の場合に遺留分を請求でき、遺言書がなければ法定相続分を主張することができます。また、仕事を辞めるなどして長期間介護を担った場合には、「寄与分」が認められる可能性もあります。
しかし、寄与分が認められるためのハードルは高く、介護に費やした時間や労力が十分に報われるとは限らないのが現実です。
今回のような状況であれば、まずは近隣に住む弟家族も交えて話し合いの場を設けることも一つの方法でしょう。たとえば、弟家族が日常的な介護や見守りを担い、サチコさんは仕送りなど金銭面で支えるという役割分担も考えられます。
それでも話し合いが全く成り立たず、一方的に負担だけを求められるのであれば、無理に仕事や生活を犠牲にせず、一定の距離を置くことも、自分自身の人生を守るための現実的な選択肢となり得るでしょう。
山村 暢彦
弁護士法人山村法律事務所
代表弁護士