医学部英語で必要なのは「難問対策」ではない
医学部入試の英語というと、難解な長文や難問をイメージする受験生も多い。しかし渡部先生は、「まず優先すべきは難問対策ではない」と話す。
「大学によって出題形式も難易度もさまざまですが、実際には合格者でも正答率の低い問題はあります。一方で、合格者の多くが正答する問題もあります。大事なのは、易しい問題や標準的な問題を確実に取れるようになることが大切だということです」
そのため、受験生についても夏の段階では過去問演習に深入りする必要はないという。
「過去問は出題傾向を確認する程度で十分です。本格的な志望校対策は基礎が固まってからで構いません」
もちろん、高2生以下のこれから受験勉強を始める人も同様だ。その土台を固めることが、医学部合格への最短ルートだという。
英語が苦手な受験生に共通する特徴
では、英語の成績が伸び悩んだり、苦手意識があったりする受験生にはどのような共通点があるのだろうか。
渡部先生は、以下の特徴を挙げる。
一つは、単語の暗記だけで何とかしようとすることだ。
「英語の点数が伸び悩む人は、単語を覚えることばかりに注力しがちです。単語はもちろん大切ですが、単語だけを覚えても英文を正しく理解できるようにはなりません。日本語でも、単語を並べただけでは意味が伝わらず、『てにをは』などを理解して初めて内容を正確に読み取れます。それは英語も同じです。単語力に加えて、文法や文構造を理解する力があって初めて、長文を正確に読めるようになります」
単語力は英語学習の土台として欠かせない。しかし、英単語の暗記だけに頼ってしまうと、文法問題や読解問題では行き詰まってしまうことも少なくないという。
もう一つは、論理的に読む習慣がないことだ。
「英語が苦手な人ほど長文を『なんとなく』で読もうとする傾向にあります。しかし英語は論理の積み重ねです。前述したように構造を正しく捉えなければ読めません」
例えば、"I love you." のような短い英文であれば、「主語(I)・動詞(love)・目的語(you)」という基本構造を理解できる生徒は多い。しかし、主語や目的語が長くなった途端、その構造が見えなくなってしまう受験生は少なくないという。
「文が長くなると難しく感じますが、基本的な構造は変わりません。どこが主語で、どこが動詞なのかを一つひとつ確認しながら読むことが大切です。『なんとなく』読むのではなく、文構造を意識して読む習慣をつけることで、長文も論理的に読めるようになります」
英文を意味のかたまりで曖昧に読むのではなく、主語・動詞・目的語や修飾関係を一つずつ確認しながら、文章を理解することが求められるという。
英語長文はなぜ独学では伸びにくいのか
渡部先生によると、英文は「文法」「語彙」「文構造」の3つの要素から成り立っている。このうち文法と語彙は独学でも力を伸ばしやすい一方、文構造(読解)を理解する力は独学だけで身につけるのが難しいという。
特に医学部レベルの問題になると、文章を正確に把握する力が求められる。
「英語長文が読めない原因は単語不足だけではありません。どこが主語で、どこが述語で、どの部分が修飾しているのか。そうした構造を正しく理解できるかどうかが重要です」
しかし、自分では正しく読めているつもりでも、実際には誤読していることも多い。という。
「だからこそ第三者の視点が必要になります。プロの講師が生徒の読解プロセスを分析し、どこでつまずいているのかを明確にすることが大切なのです」
この夏に最優先で取り組みたいこと
このように文構造の理解にはプロのサポートも有効だが、逆に言えば、この夏、自分で重点的に取り組めるのが文法と語彙の強化だ。
「『英語の成績を上げたい』『苦手を克服したい』という方に、この夏に最優先で取り組んでほしいのは、文法と語彙です」
文法については、参考書を最初から最後まで読み込む必要はないという。
「まず問題を解いて、自分が理解できていない部分を確認する。そのうえで解説を読むほうが効率的です」
語彙については、単純な丸暗記だけに頼らないことがポイントだ。
「単語集1冊分の語彙を身につけようとすると、一般的には3か月ほどかかります。だからこそ後回しにせず、毎日コツコツ積み重ねていくことが大切です」
渡部先生は、語源から英単語を理解できる『英単語の語源図鑑』(かんき出版)のような書籍を活用するのも一つの方法だと話す。
「一見、遠回りに見えるのですが、語源の意味が分かると、単語同士のつながりが見えるようになります。一つひとつを独立して覚えるよりも記憶に定着しやすく、学習効率も高まります」
苦手克服に必要なのは「努力」よりも「分析」
渡部先生は、医学部受験において重要なのは、やみくもに勉強量を増やすことではなく、「苦手の原因を正しく見極めること」だと強調する。
「英語が苦手な理由は一人ひとり違います。文法が弱いのか、語彙が足りないのか、それとも文構造の理解でつまずいているのか。まずは原因を分析し、それに合った対策を取ることが大切です」
メディカルラボでは、生徒一人ひとりの課題を分析した上で、個別カリキュラムを作成。英語では単語・文法・読解など、様々な出題の中からどこにつまずいているのかを見極めつつ、一人ひとりに合わせた指導を行い、苦手克服を目指す。さらに秋以降は、生徒の理解度に応じて弱点を補強しつつ、英作文の添削や共通テスト対策など、志望校合格を見据えた指導を進めていく。
夏を有意義に過ごすために大切なこと
最後に渡部先生は、この夏を有意義に過ごすために必要なことについて次のように語る。
「現役生の場合、夏休みが終われば再び学校生活が始まり、自分のペースで勉強できる時間は限られてきます。その意味で、夏は非常に重要な時期です」
一方で、夏休みを成功させるために必要なのは、単に勉強時間を増やすことだけではないという。
「大切なのは『心の持ちよう』と『サポート』の二つです。特に心の持ちようは重要です。受験生は夏が大事だと頭では分かっています。しかし、人は情報だけでは動きません。実際に行動できるかどうかはモチベーションの影響も大きいです」
実際に、これまで数多くの受験生を指導してきた経験から、医学部に合格した生徒の多くは、夏休みをきっかけに勉強へのスイッチが入り、高いモチベーションを維持したまま最後まで走り切っていたという。
そのため渡部先生は、生徒たちに医学や医師の仕事に関する書籍や動画、映画などに触れることを勧めている。
また、どうしてもすぐに結果を出したいと考えてしまいがちだが、結果を急ぎすぎないことも重要だと渡部先生は話す。
「特に英語は、勉強を始めてすぐに成果が表れる教科ではありません。語彙や文法、読解力は日々の積み重ねによって少しずつ身についていくものです。現役生の場合は、夏に積み重ねた学習が秋から冬にかけて実を結び、大きく成績を伸ばすケースもあります。夏の段階で思うような結果が出なくても焦らず、コツコツと学習を続けることが大切です」
「長い目で成長を見守ってほしい」保護者へのメッセージ
最後に、渡部先生は保護者へのメッセージも送ってくれた。
「私自身も受験生の保護者だった経験があるのですが、保護者にできることは、勉強を教えることよりも、安心して学べる環境を整えてあげることではないかと思います。結果を急いで子どもを追い込むのではなく、長い目で成長を見守ってあげてほしいですね」
この夏は、勉強時間を増やすだけでなく、自分の課題を知り、正しい学習法を身につける絶好の機会だ。医学部合格への第一歩として、自分に合った学び方を見つけることから始めてみよう。

