認知症を患った母を4年間介護してきた末娘。母は生前、「こんなに世話になっているんだから、この家はあんたに残したいね」と口にしていました。だからこそ、母の死後に始まった相続の話し合いで告げられた言葉は衝撃的でした。「介護してくれたことには感謝している。でも相続は別問題だよ」――家族みんな同じ認識だと思っていた。その思い込みが、思わぬ相続トラブルを招くことがあります。FPの三原由紀氏の解説とともに、介護をめぐる「きょうだい間相続」の実態を見ていきましょう。
「母さんの介護ありがとう。でも、遺産は平等に分けような」…兄の言葉から始まった“地獄”。87歳母を看取った末娘、1,800万円の家を巡って「まさかの泥沼相続争い」へ【FPが解説】
母の思いは知っているはずなのに…兄と姉が放った「まさかの言葉」
母の四十九日を終えた後、相続の話し合いが始まりました。母の財産は、実家の土地建物が約1,800万円、預貯金が約500万円。合計約2,300万円です。
久美子さんの兄(65歳)は神奈川県在住で再雇用勤務中。姉(62歳)は東京都内で夫と暮らしています。介護については、二人とも久美子さんに感謝しており、母も3人の前でたびたびこう話していたのです。
「私は久美子に一番世話になっているからね。この家くらいは久美子に残したいね」
久美子さんは当然、母が生前に話していた内容で話が進むものだと思っていました。ところが兄と姉は、こう切り出したのです。
「介護してくれたことには感謝しているよ。でも、財産の振り分けは法定相続で考えるべきじゃないか?」
「お母さんが『家を久美子に』って言っていたのは覚えてる。でも、最後までそう思っていたなら、遺言を残しているんじゃないの?」
2人は法定相続どおりに2,300万円を3分割した766万円ずつ分けることを主張したのです。久美子さんは耳を疑いました。母の思いも、自分の苦労も理解されていると思っていたからです。しかし、兄が続けた言葉はこうでした。
「介護サービスも使っていたのに、家という財産をまるまる渡さなきゃいけないほどだったとは、思えないんだよな。介護、そんなに大変だったのか?」
その瞬間、久美子さんは言葉を失いました。
フルタイム勤務を諦め年収が半減、4年間で1,000万円近くの減収となりました。それにより、将来の老後資金づくりは後回しになったこと。夜中に何度も起こされ、常に母を気にかけながら暮らしたこと。そうした苦労を、兄と姉が理解していないことに気づいたのです。
「別に、遺産狙いで母の介護をしたわけじゃありません。ですが、遠くから『ありがとう』と言っていただけの兄と姉が、私と同じ額を受け取るのは、さすがに納得がいかないんです。何の報いもないのなら、どうして私だけが、自分の人生とお金を犠牲にしなければならなかったんでしょうか……」
長年尽くした母を看取り、ようやく大役を終えて安心したのも束の間。久美子さんを待ち受けていたのは、身内であるきょうだい間での遺産争いだったのです。
