母の思いは知っているはずなのに…兄と姉が放った「まさかの言葉」

母の四十九日を終えた後、相続の話し合いが始まりました。母の財産は、実家の土地建物が約1,800万円、預貯金が約500万円。合計約2,300万円です。

久美子さんの兄(65歳)は神奈川県在住で再雇用勤務中。姉(62歳)は東京都内で夫と暮らしています。介護については、二人とも久美子さんに感謝しており、母も3人の前でたびたびこう話していたのです。

「私は久美子に一番世話になっているからね。この家くらいは久美子に残したいね」

久美子さんは当然、母が生前に話していた内容で話が進むものだと思っていました。ところが兄と姉は、こう切り出したのです。

「介護してくれたことには感謝しているよ。でも、財産の振り分けは法定相続で考えるべきじゃないか?」


「お母さんが『家を久美子に』って言っていたのは覚えてる。でも、最後までそう思っていたなら、遺言を残しているんじゃないの?」

2人は法定相続どおりに2,300万円を3分割した766万円ずつ分けることを主張したのです。久美子さんは耳を疑いました。母の思いも、自分の苦労も理解されていると思っていたからです。しかし、兄が続けた言葉はこうでした。

「介護サービスも使っていたのに、家という財産をまるまる渡さなきゃいけないほどだったとは、思えないんだよな。介護、そんなに大変だったのか?」

その瞬間、久美子さんは言葉を失いました。

フルタイム勤務を諦め年収が半減、4年間で1,000万円近くの減収となりました。それにより、将来の老後資金づくりは後回しになったこと。夜中に何度も起こされ、常に母を気にかけながら暮らしたこと。そうした苦労を、兄と姉が理解していないことに気づいたのです。

「別に、遺産狙いで母の介護をしたわけじゃありません。ですが、遠くから『ありがとう』と言っていただけの兄と姉が、私と同じ額を受け取るのは、さすがに納得がいかないんです。何の報いもないのなら、どうして私だけが、自分の人生とお金を犠牲にしなければならなかったんでしょうか……」

長年尽くした母を看取り、ようやく大役を終えて安心したのも束の間。久美子さんを待ち受けていたのは、身内であるきょうだい間での遺産争いだったのです。