厚生年金が全額ストップ!?…見落としていた「失業給付」

ヨシヒトさんが60歳で退職後、他の職に就かずに求職活動をされるのであれば、雇用保険制度から「失業給付(基本手当)」が受給できます。ただし、繰上げ受給を選択した場合、65歳になるまでは基本手当との調整が行われ、基本手当を受給している期間は老齢厚生年金が全額支給停止になります。老齢基礎年金は支給されますが、老齢厚生年金は受け取れないのです。

先ほど説明した受給累計額の逆転時期(81歳)は、この支給停止分は含まれていません。つまり、失業給付を受ける場合は、繰上げをすると逆転時期が早まり、損するタイミングが前倒しになる可能性があります。

一方で、もし繰上げをしなければ、基本手当はそのまま受給でき、65歳以降の老齢厚生年金が止まることもありません。

年金事務所の職員は「お言葉ですが、繰上げを取りやめるか、あるいは基本手当の受給を終えてから繰上げを検討したほうがいいのではないでしょうか?」と、ヨシヒトさんに問いました。

幸いヨシヒトさんには十分な貯蓄があり、今後大きな支出の予定もありません。失業給付で足りない分は貯蓄で補い、生涯受給できる年金は繰上げ時期を遅らせて減額を抑えるか、あるいは繰上げせず満額で受給するほうが安心できるといえます。

「失業給付を受けられるのか……! これまで長いこと払い続けてきた雇用保険料は、まさにこういうときのためだったんだな」

ヨシヒトさんは年金事務所の職員の助言を受け、いったん繰上げ受給を見送り、まずは求職活動をして基本手当を受給することにしたのでした。

一度決めたらキャンセルNG…「繰上げ受給」検討時には慎重に判断を

繰上げ受給には、基本手当との調整以外にも注意点があります。

・病気やケガで障害が残った場合、障害年金が請求できなくなることがある

・配偶者が亡くなった場合、「遺族厚生年金」と「繰り上げた老齢年金」のどちらかを選ぶ必要が生じ、調整が入ることがある

60歳前後は、今後の働き方やお金の不安が大きくなるものです。しかし、老齢年金の繰上げ受給は、一度選択して手続きをすると取り消すことができません。検討する際は、あらかじめ注意点を確認したうえで決断するようにしましょう。

五十嵐 義典
特定社会保険労務士/CFP
株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役

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