夫婦が揉めた「220万円の使い道」

長女の提案は堅実なものでした。「何かあった時にすぐ引き出せるように、家族用の普通預金口座に入れておこう」というものです。

一方、夫は「普通預金に放置はもったいない。しばらく使わないんだから『つみたてNISA』を使って月々10万円ずつ投資に回すべき」とのこと。

この提案に娘が反論。

「パパとママからもらった大切なお金を、NISAなんてよくわからないものに変えたくない!」

そんな娘に対して、夫は資産運用の重要性を必死に説明。しかし娘は「投資はギャンブルのようなもの」というイメージがあるらしく、夫の話はまったく響かなかったといいます。

議論が平行線をたどるなか、夫が「もっと本やニュースを見て、少しは世の中のことを知ってくれ」と言い放ったことで、娘は「夫が自分をバカにしている」と激昂、家を飛び出してきたのでした。

「娘は年を取って授かった子ということもあり、少々甘やかしすぎたのかもしれません。娘のマネーリテラシーの低さは、親である自分たちにも責任があると反省しています」

オサムさん夫婦は、娘に「旦那さんは家族の将来を真剣に考えて提案してくれたはず。感情的にならず、もう一度しっかり話し合いなさい」と優しく諭し、数日後に長女と孫を自宅へ帰しました。

幸いにも離婚の危機は回避できそうですが、夫婦の心には深いしこりが残ることとなりました。

相続の実情

今回のオサムさん夫婦のように、老後に一定以上の資産を持つ世帯にとって、生前贈与などの相続対策を講じるという判断自体は、決して間違っていません。

最高裁判所事務総局の「司法統計年報(令和6年度)」によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割調停・審判の件数は年間1万5,379件にのぼります。単純に割ると、1日42件以上のトラブルが家庭裁判所に持ち込まれている計算です。

また、オサムさん夫婦には自宅(不動産)もあるため、将来的に相続税の課税対象となる可能性は十分あります(※)。よって、基礎控除(年間110万円)を利用した生前贈与は合理的でしょう。

(※)相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)。実際には配偶者控除もあるためこの限りではないが、ここでは割愛。