退職金2,261万円と受け取り方の選択

都内の製造業に勤務し、60歳で定年退職を迎えた佐藤建一さん(60歳・仮名)。退職手続きのなかで、会社から退職金の支給額と受け取り方法について説明を受けました。

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付(一時金・年金)制度がある企業割合は74.9%で、従業員1,000人以上の企業では90.1%に上ります。佐藤さんの勤務先でも同制度が導入されており、退職金の総額は約2,260万円でした。

同調査によると、大学・大学院卒の定年退職者に対する退職給付額は、退職一時金と退職年金の両制度を併用している企業で平均2,261万円となっています。佐藤さんの退職金も、この平均的な水準に近いものでした。
提示された受け取り方法は、「退職一時金(全額一括)」「退職年金(全額分割)」「退職一時金と退職年金の併用」の3パターンです。退職金は長年の勤労の対価ですが、受け取り方によって税負担や将来の手取り額に違いが生じる場合があります。

安全策として選んだ「一時金と年金の併用」

佐藤さんには、退職後すぐにまとまった資金が必要でした。

「住宅ローンの残債がまだ残っているため、一括返済に充てる資金が必要です」

そのため、全額を年金形式で受け取る選択肢は早い段階で候補から外れました。

一方で、全額を一時金で受け取ることにも不安がありました。まとまった資金を一度に手にすると、計画以上に使ってしまう可能性があると考えたからです。

検討の結果、佐藤さんは「一時金と年金の併用」を選択しました。退職金の半分である1,130万円を一時金として受け取り、残りの1,130万円を10年間にわたり年金形式で受け取ることにしたのです。

一時金として受け取る部分には退職所得控除が適用されます。また、年金形式で受け取る部分についても、制度によって異なるものの、税務上は雑所得として扱われるケースがあります。

佐藤さんは、まとまった資金を確保しながら老後の収入も維持できるバランスのよい方法だと考えていました。

退職翌年、国民健康保険料の通知書に驚き

年金形式での受給を始めてしばらくしたころ、佐藤さんのもとに、市区町村から国民健康保険料と介護保険料の通知書が届きました。前年の給与収入はなくなっているにもかかわらず、想定していたよりも保険料負担が重く感じられた佐藤さんは、市区町村の窓口で説明を受けることにしました。

担当者から説明されたのは、国民健康保険料や介護保険料の算定において、前年の所得が影響する仕組みです。佐藤さんの場合、会社から受け取っている年金形式の給付が所得として計上されており、それが保険料算定の基礎となる所得額に反映されていました。