原則65歳から始まる年金受給ですが、60~75歳の間で受け取り時期を選べることをご存じでしょうか。「繰上げ受給」は早くもらえる一方で受給額が減り、「繰下げ受給」は遅くなる代わりに受給額が増える仕組みです。ただし、「老後資金を増やしたいから」と繰り下げ受給を目指しても、実際には体力面や人間関係などが理由で計画どおりに働き続けられないケースも少なくありません。そこで本稿では、横山光昭氏・関口博美氏の著書『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(小学館)より、67歳男性の事例を通して、繰り上げ受給・繰り下げ受給それぞれの特徴と、繰り下げ計画が頓挫した場合の「改善策」についてみていきましょう。
(※写真はイメージです/PIXTA)
「老後資金が心許ない…」貯金800万円・67歳男性、70歳まで働き「繰下げ受給」で“年金増額”を狙うも頓挫したワケ【FPが解説】
「生活費が足りない」なら、迷わず年金の繰り上げを検討する
しかし、働きたいけれど働けない、もしくは現役時代に老後資金が十分につくれなかった方は、WPP理論の実践など考えるべきではありません。定年後すぐに、日々の生活に困るという方もいるでしょう。この場合、繰り下げどころか、繰り上げを検討してください。
まずは生活が第一。日々の生活費に困るようであれば、早めに年金を受給し、支出を年金などの収入額にできるだけ近づけていきましょう。
こうして新たな生活基盤をつくり直し、それでも赤字が続きそうなら、改めてその後の暮らし方を再検討します。日々の生活を安定させることが先決です。
「老後資金が心許ない…」年金増額を狙う貯金800万円・67歳男性の事例
Gさん(67歳)は妻とふたり暮らしで、子どもはいません。贅沢に暮らしてきたわけではありませんが、あまり貯蓄できずに定年を迎えます。退職一時金は約600万円で、貯蓄は総額約800万円となりました。
老後資金が心許ないと考え、定年後も再雇用制度を利用して働き続けました。この間、70歳まで雇用される別の業種の委託社員になる話が舞い込み、転職を決意。ところが、転職先の業務が肌に合わず、ストレスが増して2年で退職。再就職も考えましたが、年齢的になかなか採用されず、年金生活に入ることを検討しています。
年金は受給を1か月繰り下げれば0.7%、1年で8.4%、10年なら84%も増やせます。Gさんも定年直後は75歳までの繰り下げを目指しましたが、生活費や健康状態が気になり始め、70歳までの繰り下げを目標とする資金計画に変更しました。
5年の繰り下げでも受給額は42%も増えるため、老後資金不足はかなり解消できます。ところが、70歳まで働き続けるもくろみが頓挫しそうなのです。