「子どもの学費は親が全額出してあげたい」という親心が、結果的に最愛の子どもを苦しめることになるかもしれません。教育費をつぎ込んだ結果、老後資金がショートして最終的に子どもの世話になる家庭が急増しています。本記事では、横山光昭氏と関口博美氏の著書『おふたりさまの老後資金は「これ」で増やす』(小学館)より一部を抜粋・再編集し、子ども2人の大学進学を控えた58歳男性の事例をもとに、教育費のかけすぎによる「老後破産」を回避するための具体的なステップについて解説します。
夫婦の「老後資金」か、子ども2人の「大学進学の教育費」か…貯金900万円・58歳父が下した〈苦渋の決断〉【FPが解説】
「貯金900万円」でも足りない…58歳父を追い詰めた教育費
Eさん(58歳)は、ふたりの子どもの大学進学を見据え、貯蓄に励んでいます。学資保険は使わず、コツコツ貯めた金額は約900万円。
十分な努力の成果ですが、ふたり分の資金としては不十分です。この先、自分たちの老後資金も見据えなければなりません。
現在、毎月6万円の貯蓄ができています。うまくやりくりしていますが、まだ削減の余地はありそうです。とはいえ、このまま教育費にお金を費やし続けると、老後資金がつくれない現実にも直面します。
そこで、子どもたちに大学費用を全面負担したい気持ちはあるものの、そうすると老後資金が不足することを伝え、協力を仰ぐことにしました。
すると、ふたりとも大学入学後はアルバイト代の一部で学費をまかなうとか、学校が斡旋する給付型や貸与型の奨学金を検討してみるとか、教育費の一部自己負担に、前向きな姿勢を示してくれたとのことです。
教育費は「聖域」となりやすく、どんなに高額でも支払ってあげたいと思うのが親心です。親の義務、責任とばかりに最後まで負担を背負いがちですが、海外では親が責任を持つのは高校までという考え方もあります。
成人年齢は18歳となりました。長い老後を見据え、ある程度は子どもの自主的な協力を仰ぎながら大学資金を捻出する姿勢も大事だと思います。
「親が全額出すのが正しい」という思い込みが老後破産を招く
私たち夫婦には6人の子がいます。「教育費はどう捻出しているのか」と、よく聞かれますが、貯金や資産運用の利益でコツコツ準備しています。ただし、高校卒業後の専門学校や大学進学のための資金として、親が準備するのはひとりあたり総額の5〜6割と決めています。このくらいあれば、入学時の費用と次年度くらいまでの学費がまかなえるからです。
わが家は全員が参加する「家族マネー会議」を毎月行います。この場で「全員に全額の学費を出すことは難しい」と伝えてあります。それを受け、子どもたちはどう工面していくかを自分たちで考えるため、議題の一つにしています。もちろん学業優先ですから、どうしても自己負担の目途が立たなければ援助するつもりです。
しかし、「自分でお金を払って学ぶ」となると、その責任を全うしたいという意識が高まるためか、サボることなく、しっかり勉強してくれます。大学に通いながらアルバイトで学費を稼ぐのは大変でしょうが、それも人生の大きな経験。
親がすべて負担するのが正しいと思い込まず、柔軟に話し合って工面していくほうが、社会的な学びもあるのではないでしょうか。