アプリによって失われる大事なもの

LINEをやっている知人もいますが、その様子を見ていると、ねんがらねんじゅう誰かからの着信があって、まるでスマホの奴隷のようです。それを、忙しいからと放っておくと「既読にならない」と文句を言われ、既読して返事をしないと「既読スルー」だ、といわれる。誰彼となく、“常に常に”返事をしなければいけない義務があるようなのはどうかと思います。 

つまり、LINEによって、一番大事な自分の時間や労力が侵害されているのです。これは非常にわかりやすい例ですが、他のアプリも、基本的に、自分の時間と労力を侵害するものです。だから私はひとつも入れていないのです。

親しき中にも礼儀あり、相手の都合を慮って連絡はすべきで、それも考慮せずに勝手に送信するというのは、少なくとも私は大いに不愉快を感じます。パソコンのメールであれば、こちらがパソコンを開いて、メールアプリを開いて、意志的に読むだけですから、忙しいときはメールを開かずに放っておけばよろしい。まことに当然のことながら、こちらの邪魔をされることがありません。 

かにかくに、スマホというものには、私は一切のアプリはインストールせず、単なる「携帯電話」として使うだけです。

それも、たとえば運転中に電話など掛けられても出ることはできないので、ふつうは電源をオフにしてあります。ですから、実際上は、こちらから事務的な用途で“発信する”だけの道具、というまことに現代にはあるまじき使用法を用いています。

林 望
作家・書誌学者

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