仕事は順調、しかし父の一人暮らしが限界に

親の介護、そろそろ考えないとな――

そう思いながらも、仕事や家庭に追われ、先送りになっている人は少なくありません。

特に責任ある立場で働く50代は、仕事のピークと親の介護問題が重なりやすい世代です。

50歳で年収2,000万円のエリート、ケンイチさん(仮名)もそのひとりでした。

ケンイチさんは都内の大手企業で管理職として働く会社員です。妻と大学生の子ども2人を支えながら、多忙な日々を送っていました。

そんなケンイチさんの悩みが、地方で一人暮らしをしている79歳の父の存在です。

父は数年前に母が亡くなって以降、明らかに様子が変わりました。同じ話を何度も繰り返す、冷蔵庫の食材を腐らせる、通帳や印鑑をなくす、ゴミ出しを忘れて家のなかにゴミが溜まる……ケンイチさんはそんな父を心配しながらも、その多忙さゆえ、具体的な対処ができなかったといいます。

「親父、このまま一人暮らしは危ないよ」

そう説得しても父は首を縦に振りません。

「俺はまともや。施設なんか入らんぞ」

息子の必死の説得で有料老人ホームへ入居

半年以上かけて話し合った結果、ケンイチさんの必死さに父が折れ、ケンイチさんの自宅近くの有料老人ホームへの入居が決まりました。

月額利用料は約35万円。入居一時金も必要でしたが、ケンイチさんにとって金額は問題ではありませんでした。

「近くにいれば何かあってもすぐ行ける」

「介護スタッフが24時間いるなら安心だ」

父も最初は不満げでしたが、食事付き・掃除不要・見守りありの生活に徐々に慣れていきました。

ケンイチさんは胸をなでおろします。

「これでようやく仕事に集中できる……」

わずか1年後、突然の呼び出し

父が施設に入居して約1年後、施設長から連絡が入りました。

「ご相談したいことがあります。一度お越しいただけますか」

訪問した応接室で伝えられたのは、ケンイチさんにとって最悪の内容でした。

「大変申し上げにくいのですが……お父様の退去をご検討いただけないでしょうか」