あれ?…アケミさんの新生活を阻む壁

ところが、住みたいと思える物件に問い合わせてみるものの、一向によい返事がもらえません。

「59歳一人暮らし、パート収入」というアケミさんの属性が、賃貸契約のハードルを高くしているようです。

徐々に焦り始めたアケミさん。離婚していつまでも同居するわけにはいかないため、仕方なく繋ぎのアパートを借りることにしました。

「仕事が安定して収入が増えたら引っ越せばいいわ」と、このときはまだ楽観的だったそうです。

そして、念願の新生活がスタートします。

資格取得に全力を注ぐため、パートは辞めました。無収入の間は預金を取り崩すことになりますが、夢が実現すればすぐ取り返せると思っていました。

半年後、無事に資格を取得、就職先もスクールの斡旋によってなんとか見つけることができます。

ところが、ほどなくしてアケミさんは、ネイリストの仕事が想像以上に過酷であることを痛感しました。

高い集中力が必要で気の抜けない作業であるうえ、顧客を飽きさせないよう気の利いた話題も必要です。指名が入れば収入が増えますが、気に入ってもらえなければ収入は基本給のままでした。

念願の仕事について1年ほど経過したころには、「このまま、やっていけるのかしら……」と先が見通せなくなってしまったそうです。

言い換えれば「生きていくために働く」ことの過酷さを知ったのでしょう。アケミさんは「いまは未来に夢も希望もありません。こんなに辛いなら離婚なんてしなければよかった」と嘆きます。

離婚を後悔しないために

今回紹介したアケミさんのように、先の見通しが甘かった故の離婚後の後悔は少なくありません。特に、夫に扶養されていた妻が離婚を望む場合、少なくとも次のような事前準備が必要でしょう。

1.経済的自立が可能かのシミュレーションをしてみる

1,500万円という金額は、一見まとまった金額のようにみえるでしょう。しかし、たとえば月に15万円で生活する場合、年間180万円が必要になり、1,500万円は8年ほどで消えてしまいます。

2.「生きていくための仕事」をする覚悟があるか自分に問う

59歳という年齢の再就職の厳しさや、体力的な限界も認識しておく必要があるでしょう。また、「理想の仕事」が「生活のための仕事」にできなかった場合の想定も大切です。

3.高齢者の賃貸リスク

離婚後に賃貸住宅に住む場合、高齢になると「住み替え」が難しくなるというリスクも念頭に置いておきましょう。いずれ実家を相続する予定であれば一定の安心は得られますが、そうでない場合は何らかの対策が必要かもしれません。

4.社会保険料や税金の自己負担を理解しているか

夫の扶養から外れると、社会保険料や税金を自ら負担する義務が生じます。手取りにどの程度影響するのか事前にシミュレーションして生活設計を立てないと、思い描いた生活ができないことがあります。