将来どれくらい年金が受け取れるかどうかは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」で確認することができます。しかし、その見込額に表示されている額がそのまま受け取れるかというと、そうとは限りません。特に、60歳以降も引き続き働き続けている場合、実際の支給額が大幅に少なくなるケースも……。64歳会社員の事例をもとに、「ねんきん定期便」と「在職老齢年金」の注意点をみていきましょう。
ねんきん定期便に「150万円」と書いてあるじゃないか…64歳男性が年金事務所で受給手続き→窓口で知った「45万円しか支給されない」理由【社労士CFPが「ねんきん定期便」の注意点を解説】
再雇用によって生じる「年金減額」の落とし穴
厚生年金に加入したまま働き続けている場合、年金には「在職老齢年金制度」による支給調整がかかることがあります。
この制度では、の合計が51万円(2025年度の場合)を超えると、超えた分の2分の1に相当する①の金額が支給停止となるのです。
①年金(報酬比例部分)の月額
②標準報酬月額
③直近1年の標準賞与額の1/12
ところが、ねんきん定期便の見込額には、この支給停止の調整は反映されていません。
Aさんの特老厚は報酬比例部分の年金で、見込額は月12万5,000円。Aさんの標準報酬月額は56万円で、賞与はなし。そのため、
12万5,000円(年金)+56万円(標準報酬月額)=68万5,000円
となり、基準の51万円を17万5,000円上回ります。
この超過分の2分の1である8万7,500円が支給停止となるため、
12万5,000円−8万7,500円=3万7,500円
となり、特老厚として実際に支給されるのは「3万7,500円」となったわけです。
年額でみると、150万円のうち105万円が支給停止ということに。給与が高いことが、結果的に大幅なカットにつながってしまった例でした。
65歳以降に支給停止対象となるのは「報酬比例部分」
まもなく65歳を迎えるAさんですが、Aさんは65歳以降もこれまでと同水準の給与で働ける予定です。
なお、特老厚の受給は65歳になる2026年3月分で終了し、翌4月分から老齢基礎年金と老齢厚生年金の受給がスタートします。その際、Aさんは引き続き在職予定であるため、在職老齢年金制度の調整対象となります。
ただし、ここで注意したいのは、65歳以降に支給停止の対象となるのは、老齢厚生年金の「報酬比例部分」だけという点です。ねんきん定期便でも、老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「経過的加算部分」に分けて表示されています。
在職老齢年金の計算では、支給停止の基準となる①の金額は報酬比例部分のみで、経過的加算部分は含まれません。老齢基礎年金も対象外です。報酬比例部分の年金額を12で割った月額が①となり、支給停止の判定に使われます。
つまり、停止の対象は年金全体ではなく、あくまで報酬比例部分に限られます。