ライフスタイルの変化などを受けて価値観が変わり、共働き夫婦が増え、性別に関わらず家事や育児を分担する家庭は増えています。しかし“分担”とは名ばかりで、実際には負担がどちらか片方に偏るケースも少なくないようです。朝日新聞取材班の著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、夫の態度の変化に苦しんだ50代女性の事例を紹介します。
(※写真はイメージです/PIXTA)
カレンダー1枚すらめくってくれないんだ…元銀行員の50代女性が“夫への期待”をやめた日。きっかけは「寝室の些細な変化」【ルポ熟年離婚】
これってさ、うちだよね…息子が指摘するほど「家父長制」がにじむ家庭
「これってさ、うちだよね」
中学校の社会科で「家父長制」を習った息子がそう口にしても、否定できなかった。多感な時期に、両親を男性が支配的な構造だと感じさせてしまったことが申し訳なかった。
「家事は女性の仕事じゃなくて、自分が気持ちよく暮らすためのものなんだよ」。せめて息子にそう伝えると、「分かってるよ」とうなずいた。
女性はいま50代半ば。数年前、義父を献身的に介護する義母の姿を見て、「夫を献身的に介護できるだろうか」と不安になった。
1人で抱え込むことをやめた妻
家庭のネガティブな話はできないと1人で抱えてきたが、前年6月に初めて、夫からの暴言や家庭での悩みを友人に相談した。友人は「そんなひどいことを言われたことない」と驚いていた。
夫から否定的な言葉を浴びるたびに、自分はだめなんだと落ち込んだ。でもそうじゃなかった。「私が傷ついてきたのは正しかったんだ」
それからは夫に何を言われても、「私に怒ることじゃないよね」と冷静に返せるようになった。来春には、大学進学のために息子が家を出るだろう。夫のためだけに洗濯やご飯の用意はしたくない。
ふと、結婚当初から家計簿に書いていた1行日記を見返した。帰りにスーパーに寄って、切らしていた牛乳を2本買った。そしたら夫も、同じスーパーで牛乳を1本買って帰ってきた。同じコト考えてたんだなあと思ったら、なんだかおかしかった。
新婚当時、お互いにいたわり合っていた日々がつづられている。結婚するとすれ違ってしまうのかな。「察してほしい」と何も言わなかった自分も悪かったのかな。息苦しさを抱えたまま2人で生きていくのかな――。
私はこれからどう生きていきたいのだろう。答えはまだ出ない。
朝日新聞取材班